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不動産投資家でもない限り、不動産を売却する機会は頻繁にないため、「売却益」という言葉に対して馴染みがない人も多いのではないでしょうか。
この売却益というのは、土地や住宅などの不動産を売却したことによって出た利益を指しています。不動産を売却すると、一時的にまとまった金額が手に入るため、必ず売却益が発生すると考えがちです。
しかし、場合によっては利益ではなく、損失が発生する可能性もあるため、必ずしも売却益が発生するとは限らないので、注意が必要です。
ここでは、売却益が発生したと仮定し、売却益の基礎知識や計算例などをご紹介していきます。
また、売却益に対する税金には、いくつかの特別控除が設けられているため、これから不動産の売却を検討している人は、この記事を読んで節税対策に繋げましょう。
売却益に関する基礎知識
- 不動産売却によって発生した利益のこと
- 売却益には税金が課せられる
- 売却益があってもなくても確定申告が必要
不動産を売却すると、場合によっては利益が発生します。日本では税制上、この利益に応じて税金が課せられる仕組みとなっています。ここでは、売却益の基礎知識について、順に解説していきます。
不動産売却によって発生した利益のこと
売却益と聞くと、不動産を売却した際に発生した利益の全てが対象となると考えがちです。売却時の利益が対象になるという考えは間違いではないものの、不動産の売却価格そのものを指している訳ではないのが現状です。
正しくは、不動産の売却価格から、売却する際にかかった費用を差し引いた差額部分が利益になります。
譲渡費用は、売却する際にかかった費用のことで、次のように特別控除が適用される場合にはさらに差し引きます。
- 売却益
- 売却価格-(取得費+譲渡費用)-特別控除
このように売却益の考え方は複雑なため、売却する予定の不動産を取得する際に受け取った領収書を保管すると共に、かかった金額をきちんと把握しておきましょう。
売却益には税金が課せられる
不動産を売却した際には、一時的にまとまった金額がそのまま手に入ると考えがちです。
しかし、前述したように売却益は、売却価格そのものではなく、売却益に対して税金が課せられます。
「不動産譲渡所得税」とは、売却益に対する税金のことで、所得税の一部であるものの、サラリーマンが受け取る給与所得とは別に区分されていることに違いがあります。
不動産譲渡所得は、所得税だけでなく、住民税を合わせて納付する仕組みとなっています。
このうち所得税に関しては、東日本大震災の復興を支援するための施策として2013年1月1日から2037年12月31日まで復興特別所得税が上乗せして徴収されます。
不動産譲渡所得税の計算方法
不動産譲渡所得税は、次のように課税譲渡所得を算出した上で税率を乗じて算出されます。
- 不動産譲渡所得税の計算方法
- 課税譲渡所得×税率
課税譲渡所得とは、すでにご紹介した売却益のことを指しています。
課税譲渡所得に対する税率は、不動産の所有期間によって「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」の2つにわけられています。
不動産の所有期間が5年で区切られているのが譲渡所得の仕組みの一つで、次の表で示すように所得税と住民税それぞれ異なる税率が定められています。
区分 | 所得税(%) | 住民税(%) | 合計(%) |
---|---|---|---|
短期譲渡所得(所有期間5年以下) | 30% | 9% | 39% |
長期譲渡所得(所有期間5年超) | 15% | 5% | 20% |
このように、不動産の所有期間が5年を超える長期譲渡所得に比べると、所有期間が5年以下の短期譲渡所得の方が高い税率に設定されていることがわかります。
なぜ、税率に差があるのかというと、バブル期に土地転がしが横行していたからです。
短期譲渡所得と長期譲渡所得では、20%近くも税率に差が生じています。そのため、不動産を売却する際には所有期間が5年を超えてからの方が、売却益が発生した際の税負担は軽くなります。
売却益があってもなくても確定申告が必要
売却益が発生した場合に課せられる不動産譲渡所得税は自動車税や固定資産税と異なり、毎年税額が通知される訳ではないので、注意が必要です。
不動産譲渡所得税は自治体などから毎年通知されず、不動産を売却した年の翌年に確定申告して納付する仕組みとなっています。
万が一、不動産を売却した際に損失が発生した場合でも、損益通算によって節税対策に繋がるため、確定申告することをおすすめします。
損益通算とは損失が出た(マイナス)場合でも確定申告をすることにより翌年以降の利益から差し引くことが出来ます。
なお、確定申告は、毎年1月1日から12月31日までに発生した所得に対して行い、翌年の2月16日から3月15日までに期間が限定されています。この申告期間を過ぎると、無申告加算税といったペナルティが課せられるリスクがあるため、早目に準備しておくと良いでしょう。
不動産売却の基本知識については、下記記事で詳しくまとめています。不動産売却が初めてで不安な人は、一度全体の流れを把握しておきましょう。
この記事では、不動産に関する流れやかかる費用といった基礎知識から、取引上の注意点などを分かりやすく解説します。節税の方法や不動産会社の選び方についても触れていますので、不動産の売却における疑問を解消するのに役立ててくださいね。
不動産売却益の計算方法
- 取得費を算出する
- 減価償却費を求める
- 譲渡費用を算出する
- 売却益を算出する
税額のベースとなる売却益は不動産を売却する際にかかった費用だけでなく、取得した際にかかった費用なども把握しておかなければなりません。売却益の計算は複雑なため、次の項目に沿って順に算出すると良いでしょう。
取得費を算出する
不動産の売却価格から、売却する際にかかった費用を差し引いくことで売却益を割り出します。売却する際にかかった費用には、取得費と諸経費が含まれており、特別控除が適用される場合には、さらに差し引きます。
把握しておかなければならない費用は、売却価格・取得費・譲渡費用の3種類です。このうち売却価格は、不動産の取引価格、取得費は売却した不動産の購入価格のことを指しています。
取得費は不動産を購入した際の売買契約書に記載された金額を確認し、次のような費用も併せて算出します。
- 建築費用
- 購入手数料(仲介手数料など)
- 設備費
- リフォーム費用
この他に、売買契約書に貼付した印紙税や、登記手続きにかかった登録免許税といった税金、登記手続きを司法書士に依頼した場合の報酬金なども取得費として含みます。
減価償却費を求める
取得費を算出方法には、実額法が用いられているため、建物の減価償却費を求めなければなりません。
ここで、減価償却とは何かを確認しておきましょう。住宅といった建物は、築年数が経つごとに資産価値が下がるのが一般的です。
減価償却とは、建物のように時間の経過と共に劣化していく資産を購入した際に、一定年数に分けて経費として計上する計算方式のことで、次のような計算式で算出できます。
- 減価償却費の算出方法
- 建物の購入価格×0.9×償却率×経過年数
償却率は税制によって定められており、税制改正が行われた2007年4月1日を境に割合が異なります。
譲渡費用を算出する
不動産を売却する際には、売却価格の金額を受け取れるだけでなく、さまざまな費用が発生します。この費用のことを「譲渡費用」といい、売却を不動産会社に依頼した際の仲介手数料や建物を解体した際の解体費用などが含まれます。
また、不動産を売却すると所有者名義が売り手から買い手に移さないといけないため、登記手続きに伴う登録免許税といった税金も発生します。
売却益を算出する
取得費、減価償却費、譲渡費用を確認できたところで、次のような計算式にそれぞれの項目を当てはめて売却益を算出してみましょう。
- 売却益
- 売却価格-(取得費+譲渡費用)-特別控除
なお、国や自治体などから公共事業のために不動産の買い取りを依頼された場合、特別控除が適用になるケースがあります。
この他にも不動産を売却する際に利用できる特別控除が複数設けられているため、売却益を算出する前に確認しておくことをおすすめします。
特別控除には「3,000万円特別控除」「10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例」「特定の居住用財産の買換え特例」などがあります。
計算例を参考にして不動産売却益を把握しよう
不動産の売却益は、購入価格と売却価格によって大きく違いが生じます。場合によっては、購入価格よりも高値で売却できるケースもあるため、次の計算例を基に大まかな売却益を把握しておくと良いでしょう。
購入価格4,000万円の戸建てが3,000万円で売却できた場合
土地価格1,000万円、建物価格3,000万円の合計4,000万円の戸建てを3,000万円で売却できた場合、次のような計算式で売却益が算出できます。なお、所有期間は15年、譲渡費用は111万円と仮定しています。
まずは、以下の計算式に基づいて取得費を算出します。
- 取得費の算出例
- 土地価格1,000万円+建物価格3,000万円-(3,000万円×0.9×償却率0.031×築年数15年)=取得費2744.5万円
次に売却益の計算式に取得費を当てはめます。
- 売却益の算出例
- 売却価格3,000万円-(取得費2744.5万円+譲渡費用111万円)=売却益144.5万円
このような場合、売却益は144.5万円発生します。
一戸建てを売却するコツと注意点は、こちらの記事で詳しく解説します。
戸建てを売ろうと思ったら、できるだけスムーズに高い金額で売却したいものです。大きなお金が動くので、後悔したくはありません。戸建売却までの一連の流れを把握し、注意点をしっかり押さえながら、売却を手順通りにスタートしましょう。
購入価格4,000万円のマンションが3,000万円で売却できた場合
購入価格4,000万円のマンションを3,000万円で売却できた場合、次のような計算式で売却益が算出できます。なお、所有期間は15年、譲渡費用は111万円と仮定しています。
先程と同様、まずは取得費の算出から行います。
- 取得費の算出例
- 建物価格3,000万円-(3,000万円×0.9×償却率0.015×築年数15年)=取得費3,292.5万円
次に売却益の計算式に取得費を当てはめます。
- 売却費の算出例
- 売却価格3,000万円-(取得費3,292.5万円+譲渡費用111万円)=売却益▲403.5万円
このような場合、売却益は発生せず、403.5万円の譲渡損失が発生します。
減価償却費はマンションよりも戸建ての方が大きい
上記でご紹介した計算例を見ると、同じ購入価格と売却価格、さらには築年数が同じでも戸建てとマンションでは売却益に大きな差が生じることがわかります。
これは、減価償却費の影響が大きいことが要因として考えられます。
償却率を見てもわかるように戸建てとマンションでは償却率に大きな違いがあり、戸建ての方が減価償却費の影響が大きいと言えるでしょう。
なお、地方都市などでは減価償却費の影響はさらに大きくなる傾向があります。
売却益にかかる税金を抑えるコツ
不動産を売却して利益が生じた場合、その利益に対して税金が課せられます。税率は不動産の所有期間によって異なるものの、決して少なくない金額であるため、次のような特別控除を利用すると節税に繋がります。
3,000万円の特別控除を受ける
居住していたマイホームを売却する場合、最高3,000万円までの特別控除が受けられる制度が設けられています。これは、課税対象となる売却益から最高で3,000万円を差し引けるというものです。
ただし、この特別控除を受けるには、次にあげる要件を満たす必要があるため、あらかじめ確認しておきましょう。
- 売却するマイホームの居住期間が10年以上
- 売却する年の1月1日時点で所有期間が10年超
- 売却前後の3年以内に新居を購入していること
- 売却価格が1億円を超えないこと
空き家の3,000万円特別控除を受ける
全国的に空き家問題が深刻化しており、空き家に対するさまざまな措置が講じられています。
放置したままで自治体から特定空き家に指定されると、固定資産税が通常の6倍になるリスクが潜んでいます。
相続した空き家を売却した場合、マイホームと同様に最高で3,000万円の特別控除が適用される制度が設けられています。
ただし、この特別控除を受けるには、次にあげる要件を満たす必要があるので注意が必要です。
- 相続の直前まで被相続人が独り暮らししていた住居であること
- 1981年5月31日以前に建てられた住居であること
- 区分所有建築物でないこと
- 相続から売却までの期間に賃貸などに出されていないこと
この特別控除は、相続した住居を2016年4月1日から2023年12月31日までの売却した場合が対象となり、相続が開始された日から3年を経過する年の12月末日までに売却していることが要件に盛り込まれています。
取得費をしっかりと計上する
取得費は、売却した不動産の購入価格だけでなく、建築費用や購入手数料、リフォーム費用などが含まれます。
この他に、売買契約書に貼付した印紙税や登記手続きにかかった登録免許税といった税金、登記手続きを司法書士に依頼した場合の報酬金なども取得費として含まれるため、売買契約書だけでなくそれぞれの領収書などをきちんと保管しておくことが大切です。
取得費は譲渡価格から差し引ける費用であるため、もれなく計上することで節税対策に繋がります。
なお、古い物件などで取得費が不明瞭な場合や売買契約書を紛失した場合、売却価格の5%で算出する概算法が利用できます。
ただし、概算法で取得費を計上した場合は、損をする可能性が高いので注意が必要です。
軽減税率の特例を利用する
2019年10月から消費税率が10%に引き上げられたものの、食料品などの一部には軽減税率が適用されています。
マイホームを売却する場合にも軽減税率が設けられているため、次にあげる要件を満たしているか確認してみましょう。
- 居住していた建物、または建物と共に土地を売却すること
- 売却した年の1月1日時点で所有期間が10年超であること
- 売却した年の過去2年間に同じ特例を受けていないこと
- 他の特例を受けていないこと
- 売り手と買い手が特別な関係でないこと
この軽減税率は、次のように売却益が6,000万円以下と超える部分で税率が変化することが特徴で、3,000万円の特別控除との併用が認められています。
売却益 | 税率(所得税) | 税率(住民税) |
---|---|---|
6,000万円以下 | 10.21% | 4% |
6,000万円超 | 15.315% | 5% |
買い替え特例を利用する
マイホームを売却して買い替える場合、売却益にかかる税金を新居を売却するまで繰り延べできる制度が設けられています。この特例を利用するには、次にあげる要件を満たす必要があります。
- 売却した年の1月1日時点で所有期間が10年超であること
- 売却する物件は居住期間が10年以上であること
- 売却価格が1億円を超えないこと
- 床面積が50平米以上の新居を購入すること
申告をおこなう場所
売却益にかかる譲渡所得税の納付や特例を受ける場合、売却した翌年に確定申告を行う必要があります。
確定申告は、インターネットを介したe-Taxでも行えますが、個人の場合は税務署が臨時会場として開設しています。
なお、確定申告は税理士に依頼しても行えますが、税理士事務所を訪れる必要があり、また、費用も発生します。
参考:【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)
申告期間
確定申告は、毎年2月16日から3月15日の期間に限定されています。期間が1か月間と短いため、取得費や譲渡費用に関係する書類を収取しておくなど早目に準備しておくと安心です。
確定申告は、前年の1月1日から12月末日までの所得を翌年の指定された期間に申告する必要があるため、1月中に不動産を売却した場合でもその年の2月16日から申告する必要はありません。
申告に必要な書類は
確定申告には申告書が必要で、税務署の窓口で受け取れる他、国税庁の公式ホームページに設けられている「確定申告書作成コーナー」でも作成できます。
申告書の他に、取得時や譲渡時の資料や全部事項証明書、戸籍の附票を添付する必要があります。
なお、e-Taxで確定申告を行う場合は、事前に利用者識別番号を取得する必要があるため、早目に届け出しておくようにしましょう。
全部事項証明書や戸籍の附票は、市区町村の窓口に行けば即日発行されるものの、郵送で請求する場合は時間を要します。
参考:所得税の確定申告|国税庁
参考:【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)
申告を忘れてしまった場合は
確定申告を忘れてしまった場合、さまざまなペナルティが設けられているので注意が必要です。申告期間が過ぎた4月以降、税務署から「お尋ね」と呼ばれる文書が対象者に通知されます。
この文書が届くことで申告のし忘れに気づいた場合、すぐに対処すれば問題ないので安心です。ただし、申告期限後の納付を怠った場合、延滞税が請求される可能性があります。
確定申告を忘れたときのペナルティとして追加の税金(重加算税)などがかかってきます。文書が届かないように確定申告を必ずおこないましょう。
不動産売却益に関するQ&A
不動産の売却が初めての場合は特に、売却益に対する疑問を持つのではないでしょうか。ここでは、売却益に関するよくある質問をQ&A方式でご紹介していきます。
海外に住んでいて売却益が出た場合は?
自動車税や自動車重量税は、転勤や移住などで海外に居住する前に一時抹消手続きを行えば、税金を納付する必要はありません。
しかし、譲渡所得税は、海外居住中の場合でも日本国内の不動産を売却すると通常通り税金が課せられるので注意が必要です。
売却した不動産の所有者が日本に戻れない場合、家族などが代理で確定申告を行えば問題ありません。なお、海外居住中でも日本国内に不動産を所有している場合は、固定資産税を納付する必要があります。
法人の場合の売却益の求め方は?
個人と法人では、売却益の算出方法に違いがあります。法人の場合、個人のように売却益が給与とは別計算される訳ではなく、他の事業の経費や賃貸経営の赤字と合算する仕組みとなっています。
売却益が増えるほど納付する税額も増える仕組みとなっているため、売却益を押さえたい場合は、経費などを合算できるので法人の方が有利です。
売却益に消費税はかかるのか?
消費税は商品やサービスなど、さまざまな取引に対して課せられています。これから不動産の売却を検討している人は、売却益にも消費税が課せられるのではないかと不安な人も多いことでしょう。
しかし、消費税は、売却益の全てに対して課せられない仕組みとなっています。例えば、土地と建物を売却して売却益が発生した場合、消費税は建物の売却価格にしか課せられません。
したがって、土地だけを売却して売却益が発生した場合、消費税はかからないので安心です。
売却益が出たら忘れずに確定申告を行おう
不動産を売却すると必ずしも売却益が発生するとは限らないものの、取得費や譲渡費用の兼ね合いから売却益が発生する可能性が考えられます。
売却益には税金が課せられるため、売却した翌年に確定申告する必要もあります。
不動産を売却する際にはこのようなことを心に留めておき、売却益が発生しても慌てずに対応することが大切です。
年の前半に売却すると、確定申告までに長い期間があるため、忘れないように確定申告を行いましょう。