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耕作しない農地を相続し、売りに出したいのですが、普通の不動産売買の方法で売れるのでしょうか?
答えは、普通の宅地のようには売れません。そのまま農地として売り出すか、地目変更をしてからの売却となります。流れも手続きも、普通の不動産売却とは異なります。
農地として売り出す方法も、いくつもの制約がありますし、地目変更にも必要な手続きを正確に踏まないと、最悪、取引そのものが無効になるケースがあります。
農地を売却するときに必要な手順と税金などを押さえて、滞りなく農地を売買するようにしましょう。
また、農地売却に困っている方は、土地買取サービスを使うのがおすすめです。
こちらの記事は、おすすめな土地買取査定サービスと流れや注意点を詳しく説明していますので、ぜひご参考にしてください。
土地を売却するなら買取がおすすめです。ここでは、土地を早く売ったほうがいい理由と、買取のメリットについてご紹介しています。また、信頼できる買取業者についてもピックアップしていますので参考にしてください。
農地を売却する方法とそのルール
農地の売却方法は「農地のまま売却」と「農地の地目を変えて売却」の二つあります。それぞれの方法を簡潔に見てみましょう。
農地のまま売却する場合
一つ目は、農地を農地のまま売却することです。メリットは、地目変更の手続きがいらないことです。
しかし、この方法だと農業を営む人か法人にしか売却できません。家庭菜園なども不可です。手続きも通常の宅地等の売却とは異なり、時間がかかります。いつくかの条件も存在し、それらを全てクリアしないといけません。
ただ、農地としての控除が受けられたり、税制面で優遇されたりするので、買い取ってくれる農家がいるのなら、この方法をおすすめします。
農地をそのまま売却のルール
農地法第3条によって、農業従事者や農家の人のみ農地を買うことができます。所有権移転には、農地法により次のように定められた条件を満たしている農家や農業従事者に限ります。
- 取得後50a以上の農地を保有することになる
※地域により広さは異なる - 所有した農地の全ては耕作を行うこと
- 常に農業に従事していること
- 農業をするために必要な人材と機械を所有していること
したがって、新たに農業を始めたいという人には、農業で使う土地といっても売ることはできません。今現在専業で耕作をおこなっている農家に売却先が限られます。
農地の地目を変えて売却する場合
ふたつ目は、農地の地目を宅地などに変更して、売却する方法です。メリットは農地よりも高く売れることです。
しかし、地目変更の手続きや条件がかなり厳しいので、それらを全てクリアする必要があります。
後程詳しく解説しますが、自分の持っている土地がどの農地に該当しているかを調べたり、専門知識のある司法書士に依頼したりと、いろいろ手間と費用がかかることも理解しておきましょう。
もし、市街化区域内であったり、大規模開発などの区域に入っているケースは、迷わずこの方法を選択しましょう。
休耕地などを見つけた不動産会社が、その持ち主に地目変更をしてアパート経営をすすめたりすることも多いようですが、法律違反がないかは要注意です。
どのような方法を選べばよいのかは、ケースバイケースだとしか言いようがありません。農地のままにしておきたいけれども耕作することが無理なのか、お金が必要だから売却するのか、などによります。
農地の地目を変えて売却時のルール
農地の地目を変えて売却するには、農地法第5条により農業委員会の許可が必要になります。それには一定の基準があります。
転用をするためには、立地基準と一般基準を満たさないと、農地転用の許可そのものが下りません。
立地基準は、次の通りです。
農地の種類 | 概要 | 許可が下りるかどうか |
---|---|---|
農用地区域内農地 |
|
原則不許可 |
甲種農地 |
|
原則不許可 |
第一種農地 |
|
原則不許可 |
第二種農地 |
|
許可されることがある |
第三種農地 |
|
許可されることが多い |
農地転用手続きに関する詳しく説明は、こちらの記事をご覧ください。
農業の担い手不足が深刻化している我が国では、相続によって農地を引き継いだものの農業を継続できないケースも多く見られます。転用によって土地の有効活用を考える場合は、手続きにかかる期間や流れを把握して段取り良く進めましょう。
農用地区域内農地・甲種農地・第一種農地では原則不許可
大規模で農地として向いている土地ほど転用許可は下りません。
農業地区域内農地では除外申請を行ったりし、長い協議の末に許可されることもありますが、非常にレアケースです。
甲種農地や第一種農地では、地域振興によって農業関連の施設が建設されるときに、許可が下りることがあります。
また、周囲の住宅地が拡張するケースにだけ、農地からの転用が許可されることがあります。しかし、いずれも非常に稀なケースです。
第二種農地では公共性のある建物のケースは許可されることが多い
第二種農地の場合には、そのあと建てる建物が周囲の土地では代用が効かない場合や、公共性のある建物を建設する場合には許可されることが多いです。
第三種農地では許可されることが多い
5種類の農地の中では一番許可が下りやすいです。
しかし、実際に調査した結果、甲種農地と判断される場合は、甲種農地の基準で農業委員会に審査されます。
そのため、基本的に農業委員会に申請し、審査を受けることが必要です。
一般基準は3項目
また、一般基準は、次のような3項目で審査されます。
- 転用する事業が申請通りに行われること
※金銭面や計画性に破綻がないこと - 周辺のうちに影響を与えないこと
- 一時転用のあとに確実に農地に復元されること
転用する事業が申請と違っていると許可を取り消されます。
また、周辺の農地に影響を与えると判断されるケースは、立地基準を満たしていても、許可が下りないことがあります。
一時転用の申請もできますが、建物を建てて使用した後に、確実に農地に戻せることが必須条件です。
一般基準については転用する先を明示し、それが確実に実行されていれば問題ありません。
農地売却なら一括査定がおすすめ
出典:HOME4U
農地を売却するなら、不動産一括査定を利用するのがおすすめです。
全国複数社で一括査定してもらえるため、納得できる値段で売却することが可能です。
特に農地の売却は、必ず農地転用手続きが発生するため、行政書士事務所と提携していない不動産会社は基本的に対応できません。
そこで複数社一括査定してもらうと、しっかり行政書士事務所と提携している不動産会社も見つかりやすいです。
他におすすめな不動産一括査定サイトを比較したい方は、こちらの記事で詳しく紹介しています。
不動産の一括査定サイトにはどのようなメリットがあるのか興味がある方も多いのではないでしょうか。この記事では不動産一括査定サイトの利点やサイトの選び方などを紹介しています。不動産売却をスムーズに進めたい方に必見の情報を詳しく解説します。
農地の地目を変えて売却する流れ
農地を他の項目に変えて売却する時には、少し流れが違ってきます。どのようなものになるのか、詳しく見てみましょう。
必要書類を揃える
まず必要書類を揃えます。農地の地目を変えて売却する時には、次のような書類が必要になります。
- 法人の登記簿謄本(法人のみ)
- 土地の登記簿謄本
- 土地の位置を示す地図
- 申請に係る土地に設置予定の施設の位置がわかる図面
- 残高証明書
- 融資証明書(買主) ※必要な場合
- 土地改良区の意見書
- 地区除外申請書
買主の書類は買主が決まってから揃えて提出します。地目の要件によっては、先に買主を探す必要があります。
こちらの記事では、不動産売却時に必要な書類と取得方法を詳しく紹介しています。
この記事では、不動産売却に必要な書類についてご紹介します。不動産売却は数多くの書類が必要となり、必須書類はもちろん、あれば不動産売却が円滑に進む書類まで余すことなくお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
法人の登記簿謄本・土地の登記簿謄本
法務局で取得でき、窓口で発行してもらう場合は1通600円です。オンラインで請求した場合には1通480円~500円です。
法人の登記簿謄本は、売主が法人の場合のみ必要です。土地の登記簿謄本は、地番等住所と異なる場合があるので、不明な場合は法務局に問い合わせるか、法務局にあるブルーマップで確認することをおすすめします。
土地の位置を示す地図
法務局で発行できる公図のことです。窓口で申請して郵送で受け取る場合や、オンラインで請求して郵送で受け取る場合は1通450円かかります。オンラインで請求し、窓口で受け取る場合は430円かかります。
申請書の「証明書」と「地図・地図に準ずる図面」にチェックを入れます。地番に関してはおおよその住所が分かれば、周辺の図面がもらえるので特に問題はありません。
発行された地図と実際の境界線が違っているケースは、近隣の土地所有者と確認することが必要です。公図は基本的に曖昧なものが多いので、トラブル防止のためにしっかりと境界線の確認を行いましょう。
申請に係る土地に設置予定の施設の位置がわかる図面
手書きでも構いませんし、専門家に依頼して書いてもらっても良いです。専門家に依頼すると数千円で請け負ってくれます。
銀行の残高証明書
700円から1,000円程度で銀行から発行してもらえます。
なぜ残高証明書が必要かと言うと、農地の転用を許可した場合に、正しく反映できる資金(資産)があるかどうかを証明するためです。買主がもう決まっている場合には買主の残高証明書でも代用可です。
融資証明書(買主) ※必要な場合
買主が金融機関から融資を受けて、農地から地目変更した後に建物を建てる場合には、買主からこの書類を提出してもらうことが必要になります。
- 融資決定通知書
- 融資見込証明書
- 融資審査完了通知書
- 融資見込額通知書
- 事前審査(仮審査)の結果通知書
上から順番に効力が強く、事前審査の結果通知書だと農業委員会の審査に通らない可能性がありますので注意が必要です。
発行手数料は6,000円から13,000円程度かかります。買主側が主に負担することが多いですが、交渉によっては売主側が負担することもあります。
土地改良区の意見書・地区除外申請書
農地を改良して他の用途で使う場合には、土地改良区の事務所に、土地改良をして支障がないことを証明する書類を発行してもらいます。
土地改良区の事務所によって費用が異なりますが、高くても3,000円程度で意見書を作成してくれます。
地区除外申請書は、土地改良区に「土地改良区の意見書」を依頼すると同時に作成してくれます。この2つの書類はセットで考えておきましょう。
農業委員会で申請を行う
必要な書類をまとめておき、農業委員会へ申請を行います。農業委員会によって呼び名が異なりますが、農地転用の許可申請書や計画書などに必要な項目を記入して提出します。
農地の種類に応じた手続きを行う
農地転用の流れは農地の広さによって大きく異なり、それぞれ必要な手続きが変わります。期間は用途などによって異なりますが、1カ月から半年ぐらいです。
農地が4ヘクタール以下の場合
都道府県知事の許可が必要で、農地転用の申請書を農業委員会に提出します。そうすると農業委員会が意見書を添付し、知事へ送付します。
知事は都道府県の農業会議でこれを諮り、農業会議からも知事へ意見の交換等を行います。
農地が4ヘクタール以上の場合
この場合農林水産大臣(地方農政局長)の許可が必要で、この申請は都道府県知事宛に申請書を提出します。
知事から意見書を付けて、農林水産大臣(地方農政局長)に諮り、結果が出たら知事から申請者に知らされます。
市街化区域内農地を売却する場合
市街化区域内農地の転用の許可は原則必要ありません。農業委員会に届出書を提出すれば良いだけです。
転用工事及び転用事実確認願を提出
許可が下りたら農地転用工事を行います。申請に係る土地に設置予定の施設の位置がわかる図面通りに、工事を行います。
工事が終了したら、農業委員会へ転用事実確認(工事終了確認)の書類を提出します。
その書類提出を受けた上で、正しく土地転用が行われているかどうか農業委員会が実地確認します。そして工事が正確に完了した旨の書類を受けることができます。
もし申請と違っている場合や、許可を受けた用途と明らかに異なっている場合には、許可が下りず、結果として工事した費用は損をすることになります。
農地転用工事は正確に申告した通りに行うように注意しましょう。途中で変更することはできません。
買主を探す
この作業は一番初めに行っても良いです。むしろ転用地目が決まっている場合(大型複合施設や商店など)には、先に買主を決めておかないと許可が下りませんし、最後の審査で落とされる可能性があります。
一番多いのが更地にしてから売買を成立させるケースです。買手と一緒になって計画し、農業委員会に申請した方が、結果として良いことが多いです。
土地も目的がはっきりしている分、高く売れる可能性が高いですし、工事費用などは買手が負担してくれることもあります。
ただし、ある程度の時間がかかってしまうことを理解しておきましょう。
不動産会社を選ぶ
買主を探すためにも、まずは不動産会社を選びましょう。地元の不動産を売却する場合には、地元の情報に詳しい不動産会社の方が有利です。
特に、地目変更を一緒に行うなど細かいケアが必要な場合に、農地売却に詳しい担当者がいる地元の不動産会社は大きな助けです。
不動産会社の選び方は、こちらの記事で詳しく紹介しています。
納得のいく不動産取引をするためには、信頼できる不動産業者とパートナーを組むことが大切です。良い不動産業者の見極め方や不動産業者の選び方のポイントなどを解説します。また、業者選びとともに重要な営業マンの見極め方についても触れています。
売買契約の締結と引き渡し
買手が見つかったら価格交渉し、売買契約を締結します。
転用許可が下りていないケースで土地を売買する場合では、必ず契約書に特約として「転用許可が下りない場合は契約を白紙に戻す」などの特約を入れておきましょう。
特約付きで契約することで、もしもの時のトラブルを防止することができます。
不動産売買契約する際の注意点は、こちらの記事をご覧ください。
不動産の売却や購入を考えている方へ向けた、不動産売買契約を結ぶ前に知っておくべきことを解説しています。契約時の流れや、契約の前にやっておくべきこと、契約をスムーズに進める方法についても説明しています。
農地をそのまま売却する流れ
農地をそのまま売却する流れについてみてみましょう。
売却先は農業委員会に相談する
まず買手を見つけます。
買手を見つける方法は、農業委員会に相談しましょう。
(相談先について)農地として売却するのですから、売却先は農業をする方になるかと思います。
なので、農業委員会や農協に相談するか、近隣の農家に問い合わせてみる、もしくは農地を扱っている不動産会社に依頼するのが一番かと思っております。
この作業は許可の申請を行う前が良いです。後からでも可能なケースもまれにあります。農業委員会に斡旋を依頼したケースは、次のような流れになります。
- 農地の売主が各市町村の農業委員会に対して斡旋申出書を提出
- 農業委員会が持っている名簿の中から適切な1名を農業委員会が選出
- 斡旋委員が仲介に入り交渉する
行政書士に相談する場合は、農地関連の法律に強い行政書士を選ぶようにしましょう。
インターネットで「農地売買 行政書士 〇〇」(〇〇は地元の地名)と検索すると、農地売買に強い行政書士の事務所がでてきます。
そこから相談する事務所を見つけると良いでしょう。筆数にもよりますが、5~10万円で転用申請から売買の全てに至るまで行ってくれます。
不動産会社に依頼
農業委員会や行政書士に相談しても見つからない場合には、地元の農地に強い不動産会社を探すと良いです。
大手で農地を扱っている不動産会社はほぼ無いので、地域密着型で農地売却の経験がある不動産会社に依頼すると、売買の流れまで滞りなく進みます。
とはいえ、買い手が農家に限られることや、いろいろな制約がある点がネックになり、宅地などの土地の売買よりも時間はかかってしまう点は理解しておきましょう。
農地に詳しいか詳しくないかは、次のような質問を不動産会社にぶつけてみると良いでしょう。
「農家の買手はいるのでしょうか?」
「農地の売買の実績はあるのでしょうか?」
「農地法を理解していますか?」
これに対して、誠実に明確に回答できる担当者がいる不動産会社なら任せても良いです。
何よりも農地売買の実績があり、買手がいることが一番重要かと思います。
必要書類を揃える
買手が見つかったら必要書類を揃えます。農地をそのまま売却する時に必要な書類は次の通りです。
- 登記簿謄本
- 土地の位置図
- 委任状
- 農家証明書
- 法人定款の写し(買主)
- 組合員、株主名簿(買主)
登記簿謄本
法務局で取得でき、窓口なら1通600円です。オンラインで行うなら480~500円です。
注意するべきは地番で、これは住所とは違います。登記権利証や固定資産税の納税通知書に記載されている番号をメモして、正しい地番を申請書に記載するようにしましょう。
地番がどうしても分からなかったら、法務局に問い合わせれば調べてもらえます。また、管轄する法務局にあるブルーマップにも記載されています。
申請は窓口で行います。発行は窓口でそのまま待って受けとるか、郵送かを選択できます。司法書士に1,000~2,000円で代行を頼むことも可能です。
また、登記簿謄本をデータ化された登記事項証明書の取得方法は、こちらの記事をご覧ください。
不動産を購入する場合、登記事項証明書が必要となりますが、その内容について詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。ここでは登記事項証明書について、詳しく解説していきます。また、申請が必要なタイミングや取得方法についても併せて紹介します。
土地の位置図
土地を管轄する役所に行き、都市計画図(役所により呼び方が異なる場合がある)を取り寄せます。役所により異なりますが1通500円が相場です。
農家証明書
買主である農家が所属する農業委員会へ発行手続きをします。役所により異なりますが1通200円程度です。
法人定款の写し・組合員株主名簿
買主が法人の場合には、会社で保管している法人定款の写しか、公証役場で保管している書類の写しが必要です。
組合員株主名簿は、農業生産法人が買主のときに必要になる書類です。買主側に用意してもらうようにしましょう。
また、書類に不備があるとまず売買の許可が下りることはないので、しっかり書類に漏れが無いようにチェックしましょう。
農地売却の許可の申請する
次に農地売却の許可を申請します。
住所のある市町村の区域内にある農地の権利取得は「農業委員会許可」、住所のある市町村の区域外にある農地の権利取得は「県知事許可」が必要です。
許可の申請を行うと、買主側が適切かどうか、必要書類から検査が行われます。
農地をそのまま売却する場合には農業に従事している農家か、法人かに限られますから、提出した書類に基づいて審査されます。
その後農業委員会で審議され、適切なら許可が下ります。この作業は売却活動と並行して行うことが可能です。期間は1ヶ月から2ヶ月ぐらいです。
売買契約の締結と引き渡し
農業委員会の許可が下りたら価格交渉し、売買契約を締結します。
注意点が1点あります。それは売却先が決まっているのに、農業委員会に農地売却を申請して許可がまだ下りていなかった場合です。
この場合は、契約書に特約として、農地売却の許可が下りなかった場合には、契約を白紙にもどす旨を特約として記載しておくと良いでしょう。
売買契約書の項目は、よくチェックしてください。
とあるケースでは、契約を白紙にもどす際に、手付金の倍額を請求されることなどのトラブルがあったそうです。
自分で契約書を作成する場合にも、司法書士などに依頼する場合にも、特約がしっかりと入っているかを確認してから、契約を結ぶようにしましょう。
農地を売却するときにかかる費用
農地を売却する時にかかる費用を取り上げます。土地を売却するだけですが、特に地目変更ではいろいろな費用がかかることがあります。
不動産会社に支払う仲介手数料
不動産仲介で農地を売却する場合、不動産会社に対して支払う仲介手数料です。
仲介手数料は、次の表をご覧ください。
取引金額 | 仲介手数料上限 |
---|---|
200万円以下について | 取引価格の5%+消費税 |
200万円超え~400万円以下について | 取引価格の4%+2万円+消費税 |
400万円以上の場合 | 取引価格の3%+6万円+消費税 |
この仲介手数料の上限は、宅地についてのものだということです。実際には、農地でもこの計算が使われていることが多いようですが、適用しなくても宅建業に違反するわけではありません。
不動産売却時の仲介手数料の詳細は、こちらの記事をご覧ください。
不動産売却の仲介手数料の仕組みを理解して有利に売却を進めましょう。手数料のポイントを理解しておくだけでも不動産仲介業者と対等に交渉をすることができるため、ぜひ読んでみてください。
農地転用の行政書士費用
農地転用宅地化をしてもらう場合、転用申請は行政書士に依頼します。
この場合に書類等を書いてもらう費用として、市街化区域内地域の場合には約10万円かかり、市街化調整区域の場合には約15万円かかります。
自分で行う場合や買主と共同で行う場合には、この費用がかからないケースもあります。
印紙税と登録免許税
売買契約書は2通用意し、それぞれに印紙を貼り付けます。その金額の一覧は次の通りです。
契約金額 | 印紙代 | 軽減措置(2022年3月31日まで) |
---|---|---|
1万円未満 | 非課税 | なし |
1万円以上10万円以下 | 200円 | なし |
10万円を超え50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円を超え100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円を超え500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え1千万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
1千万円を超え5千万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
5千万円を超え1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 | 60,000円 |
5億円を超え10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
参考:国税庁
土地の名義変更に伴う、登録免許税は計算は次の通りです。
不動産評価額(固定資産税評価額)×2%
2023年3月31日までの軽減措置として、その間の取引は次の計算になります。
不動産評価額(固定資産税評価額)×1.5%
登録免許税は法務局で名義変更の際に支払います。
農地の固定資産税計算方法は、こちらの記事をご覧ください。
農地を引き継いだことで「固定資産税が気になる」という人におすすめの記事です。農地の区分の調べ方や固定資産税の求め方、具体的な計算例、実際に固定資産税を納める場合の支払い方法、注目を集める2022年問題についても解説します。
利益が出たときにかかる譲渡所得税
土地の売却によって利益がでたら、譲渡所得税がかかります。税率は次の通りです。
短期譲渡所得(5年以下) | 長期譲渡所得(5年超え) | |
---|---|---|
譲渡所得税(復興特別所得税2.1%を含む) | 30.63% | 15.315% |
住民税 | 9% | 5% |
合計 | 39.63% | 20.315% |
年数の数え方ですが、土地を取得した日から、土地の取引をした日の年の1月1日までの計算になるので、注意が必要です。
例えば、2015年5月1日に土地を購入して、2020年6月1日に土地を売却した場合は、2015年5月1日から2020年1月1日までの4年7ヶ月になります。この場合は、短期譲渡取得になります。
土地を相続した場合には、土地の購入日は被相続人の契約した時期が採用され、日数は引き継がれます。
譲渡所得は経費などを差し引いて出せます。
譲渡収入金額-取得費-経費(仲介手数料・書類発行費用・司法書士依頼の費用等)=譲渡所得
不動産売却に関する譲渡所得税と確定申告に関して、こちらの記事をご覧ください。
不動産売却時にかかる各種税金は、不動産の種類や面積などの諸条件によってその額が変化します。譲渡するタイミングによっても税額が変化することがあり、思わぬ高額な経費になりかねません。節税のための各種控除や確定申告の方法について詳しく迫ります。
土地の売却には消費税はかからない
土地の売却そのものは個人間のやり取りなので、売買の代金に消費税はかかりません。
仲介手数料や司法書士に依頼した費用などには消費税がかかります。
土地売却時の消費税に関して、こちらの記事で詳しく説明しています。
土地を売買するとき、消費税が課税されるのかどうか心配な人も多いでしょう。課税・非課税の別は土地の種類や、取引相手が業者か個人かによっても異なります。どのようなケースで課税が行われるのかを知り、安心して取引に臨むようにしましょう。
農地には特別控除が存在する
農地にはその譲渡を簡単にするために特別控除が存在し、その部分は非課税になります。
控除の金額の種類 | 項目 |
---|---|
800万円の特別控除 |
|
1,500万円の特別控除 |
|
5,000万円の特別控除 |
|
個人間での売買に関わるのは800万円の特別控除です。農業委員会を通して売却先を見つけた場合に適用になります。
農地売却するときの注意点
- 農地が荒れている場合
- 農地売却の経験がある地元の不動産会社を選ぶ
- 農地の地目を変えると税金が高くなる
- 2022年以降は売却価格が下がる可能性がある
農地を売却する時の注意点を4つあげます。この4点を押さえておかないと、上手に売却することができない可能性がありますので、しっかり覚えておきましょう。
農地が荒れている場合
耕作を放棄し、荒れ放題となった農地は「休遊農地」や「耕作放棄地」と呼ばれ、農地としてみなされず、税制の優遇も受けられません。
かと言って、他の用途として活用しようとしても、農地法によって、簡単には売却することができません。
したがって農地としてしっかり手入れしておく必要があります。
荒れ放題となった農地は、近隣の農家の人に貸し出して一旦耕作をしてもらうか、自費で農地に戻す必要があります。
業者に依頼した場合、費用は10aで10万円程度かかります。したがって時間を費やして、土地を荒れさせるメリットはありません。
農地転用の場合においても、農地を正常な状態に戻しておくことが手続き上必要な場合があるので、注意しましょう。
農地売却経験がある不動産会社を選ぶ
農地売却には、特定の手続きや書類作成など専門家に頼まないと解らないことだらけです。
不動産会社選びにおいても、農地売却の経験がない業者だといろいろミスが起こるかもしれません。
最悪のケースでは、売ることはできない、といった事態にもなりかねませんので、農地売却の実績がある不動産会社をしっかりと選ぶようにしましょう。
農地転用が多い地域の地元の不動産会社なら、農地売却の経験のある担当者がいる可能性が高いです。
不動産会社を地域で選定するなら、一括査定サイトで大手の不動産会社を省いた中から、農地売却の経験のある業者を選ぶと良いです。
イエイなら全国約1,700社から、あなたに合った業者をマッチングしてくれます。イエイを利用して、農地売却に強い地元の不動産会社を探してみましょう。
農地の地目を変えると税金が変わる
農地は固定資産税が優遇されています。
一般農地であるのなら、固定資産税評価額は作物の算出額から出され、それに0.55をかけて、さらに1/3減額などの優遇を受けることができます。
農地転用で地目を変えると、更地と同じ税金になり、固定資産税評価額は路線価(農地の算出額の数十倍)より算出され、上記の農地のような優遇措置が受けられなくなり、税額は、結果として数十倍~数百倍になります。
2022年以降は売却価格が下落可能性
1991年に農地を守る目的で、農地の税制面などを優遇し、代わりに30年間の営農が条件付けられた「生産緑地法」の改正が行われました。
この生産緑地法の「30年間の営農義務」が解除される2022年に、多くの農地が売りに出されることが懸念されています。
そこで法律等の改正が無い場合には、地価の下落が予測されます。
地価の下落を招くことを嫌って、法律を新しく作るか改正する可能性も無くは無いですが、現状まだその動きはありません。
したがって、このままの状態では2022年に地価が下落し、土地を売っても利益にならない可能性があります。
対策としては2つあります。1つは農地としてそのまましばらく地価が落ち着くまで、近隣の農家などに貸し出したりして農業をしてもらうことです。
もう1つは2022年が来る前に売り払ってしまうことです。いずれにしても早い選択が迫られることでしょう。
2022年の生産緑地法に関する問題は、こちらの記事をご覧ください。
「生産緑地の2022年問題」とは、生産緑地の買取り申請が2022年以降に可能となることで農地の売却が増加し、不動産価値が下がるリスクのことをいいます。生産緑地法改正によりリスクは減少したものの、農地転用は徐々に進むと見られており、対応の検討が必要です。
農地売却は複雑でさまざまな手続きが必要
農地売却の方法は、複雑でいろいろな制約があるので、正しく手続きをしないといけません。細かい点までしっかりと押さえ、不備の無いように手続きをするには、やはり専門家に聞くことが一番です。
農地売買に強い行政書士・司法書士や、農地売却の経験のある不動産会社は、複雑な農地売却の大きな助けとなります。
一括査定サイトなどを上手に用いて、そのような専門家に繋がってみてはいかがでしょうか。
農地の売却は、そのまま農地として農家に売却するか、地目を変更して売却するかの2択です。
さまざまな制限や手続きがあるので、自分の勝手な判断で行うと売却できない、ということになりかねません。
農地売却する時の注意点等をしっかりと踏まえ、なるべく農地を上手に活用する方法を早く判断する必要がありますよ。