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高齢化が進んでいることや、海外からの農産品に対する関税の廃止などにより、国内の農業は衰退傾向にあります。
その影響もあって、国内の農地は徐々に減少しており、何も作られていない休耕地や、耕作そのものを放棄してしまった農地を目にすることは珍しくありません。
利用されていない土地があるなら、資産として有効活用すればよいとも思う人も多いです。
ところが、国は農業を保護する観点から、法律で様々な制限を設けており、簡単には売却することができなくなっています。
とくに、農地を別の使用目的の土地に転用する場合には、適切な申請方法や手続きについて把握しておかなくてはなりません。
転用の可否や申請の流れを知ることで、スムーズな土地活用を目指しましょう。
農地を転用して売却する予定の方は、農地売買に関する注意点と流れを紹介しましたので、ぜひ合わせてご覧ください。
農地は普通に売却することはできません。理由は農地法で制限されているからです。しっかり手順に乗っ取って売却を行わないと、契約そのものが無効になることもあります。農地を相続した場合は、農地が荒れる前に判断できるよう知識をつけましょう。
農地転用申請から完了までの流れ
まずは申請の流れを見てみましょう。広さや場所によっても、許可がおりるまでのステップ数や審査の時間に違いが出てきます。
4ヘクタール以下の農地の転用の場合
4ヘクタール以下の農地の中でも、30アール以下の比較的狭小な農地では、以下の流れで転用許可手続きが行われます。
- 申請者は農業委員会に申請書を提出
- 委員会は意見を付けて、知事または市町村長に送付
- 許可が下がると申請者に許可を通知
一方、農地が30アールを超える場合、委員会は都道府県農業委員会ネットワーク機構から意見聴取を行います。
機構からの回答をもとに、委員会が意見を付けて知事等に送付するのは同じですが、場合によっては農林水産大臣(実際には地方農政局長)との協議が必要な場合もあります。
農地が30アールを超える場合の流れは下記となります。
- 申請者は委員会に申請書を提出
- 委員会は都道府県農業委員会ネットワーク機構に意見聴取
- 委員会は機構の意見も踏まえ、知事または市町村長に意見を添えて送付
- 知事等は必要に応じて地方農政局長に協議する
- 許可が下りると申請者に許可を通知
4ヘクタールを超える農地の転用の場合
- 申請者は委員会に申請書を提出
- 委員会は都道府県農業委員会ネットワーク機構に意見聴取
- 委員会は機構の意見も踏まえ、行政担当部門に意見を添えて送付
- 担当部門から農政局に協議が求められる
- 農政局の回答により許可が下りると申請者に許可を通知
4ヘクタールを超える規模が大きい農地を転用する場合には、あらかじめ農林水産大臣(地方農政局長)に協議することとされています。
委員会によって意見が添付されて送付される許可申請は、市町村の担当部門から該当する地域の農政局に回ります。
市街化区域内にある農地の転用の場合
市街化区域内の農地は、あらかじめ農業委員会に対して適切な届出が?われていれば、委員会の判断による許可で転用できます。
市街化区域は、積極的に市街化を促進するべき地域として、都市計画法に位置付けられている土地です。
したがって、法律に基づいた申請が行われていれば、下記のように少ないステップで許可がおります。
- 農業委員会へ届出書提出
- 委員会から受理通知が申請者に届く
農地が転用できるまでの期間の目安
ここからは、実際に農地が転用できるようになるまでの期間について見ていきましょう。
最近では行政手続きの効率化により、手続き完了までの期間が短縮されるようになってきました。
6週間が転用期間の目安
手続き開始から許可が下りるまでの期間は、どの転用手続きでも変わらず6週間が目安です。
ただ、受付や審議の日程は決まっており、その日を逃すと次の申請受理が2カ月も伸びてしまうので注意しましょう。
また、農振除外などの複雑な案件では、許可がおりるまでに1年程度かかることもあります。
余裕を持ったスケジュールを計画し、受付日を逃さないようにしましょう。
一部の自治体では転用期間が4割短縮
農地の転用では面積によって許可権者が異なります。
とくに面積が大きくなるほど行政の手続きは煩雑化し、許可が下りるまでのプロセスも長くなりがちです。
こういった、国の許可または協議が必要だった農地転用の案件について、都道府県と同様の権限を持つ指定市町村制度が創設され、市町村が主体となった農地の確保とまちづくりの両立が可能になってきています。
許可権者がより小さな行政単位の長となったことで、市から県へ意見を付けて書類を送付することや、都道府県の審査が不要となったことが、手続きの簡略化に大きく寄与しています。
申請を代行した行政書士等の専門職からも、行政の処理期間が約4割短縮されたことに対する好意的な評価が得られています。
この制度は、平成31年3月27日の段階で、23道府県59市町が対象となっているので、自分の持っている農地が所在する市町村の制度をあらかじめ確認しておくようにしましょう。
実際の転用期間は自治体で異なる
農地転用許可権限の指定市町村等への移譲については、自治体によってその効果がまちまちです。
具体的な例を見てみると、事務処理期間として28日を要していた諫早市では、改正後に18日まで処理時間を短縮できました。
また、飯田市は40日を要していたものが最短25日になっています。
事務作業の効率化による市民サービスの向上は、それぞれの自治体での取り組みによるところが大きいですが、地域差が残っていることも考慮しておきましょう。
農地転用をスムーズに行うポイント
- 転用可能な農地の条件を把握
- 申請する書類に不備を起こさない
- 申請を専門家に委託してしまう
転用にかかる期間のことを考えると、申請手続きを段取り良く行うことと、転用できる農地の条件などを把握しておくことが重要になります。
転用可能な農地の条件を把握
転用はすべての農地で可能なわけではありません。そこには、「立地基準」と「一般基準」という2つの基準が関係します。
転用許可を得るためには、どちらの基準もクリアしていなくてはなりません。
立地基準とは、農業における優良性や周辺環境から区分して、転用が可能か判断する基準です。
農業を営むにあたって優良で大規模な農地であれば、今後も農地として利用する価値があることから、許可されにくくなります。
反対に、都市化が進む地域では概ね問題なく許可されるでしょう。
それらを評価した農地の種類により、転用の可否は、下表のようにまとめられています。
農地の種類 | 説明 | 転用 |
---|---|---|
農用地区域内農地 | 農業振興地域整備計画において農用地区域とされた区域内の農地 | 原則として許可されない |
甲種農地 | 市街化調整区域内の土地改良事業等の対象となった農地など、とくに良好な営農条件を備えている農地 | 原則として許可されない |
第1種農地 | 10ヘクタール以上の規模の一団の農地、また土地改良事業等の対象となった農地など、良好な営農条件を備えた農地 | 原則として許可されない |
第2種農地 | 市街地化が見込まれる区域にある農地、または生産性の低い小集団の農地 | 周辺のほかの土地に代えられなければ許可される |
第3種農地 | 市街地化が進んだ地域にある農地 | 原則許可される |
また、転用は明確な目的がなければ認められません。
この目的が達成できるかどうかを判断する基準として一般基準が設けられており、その内容は以下のとおりです。
市街化区域の側などは認められやすく、農地としてしっかりと活用されている(生産性が高い)場合などは認められにくいようです。
一般基準は以下のとおりです。
- 申請目的を実現できる資力や信用がある
- 転用する農地の関係権利者から同意を得ている
- 転用許可後すみやかに申請目的のために使用する見込みがある
- 事業の許認可を受けられる見込みがある
- 事業のために必要な協議を行政と行っている
- 転用する農地と一体に使用する土地を利用できる見込みがある
- 事業の目的に適正な広さの農地である
- 周囲の農地等への影響に適切な措置を講じる見込みがある
- 一時的な転用では農地に戻されることが確実と認められる
申請する書類に不備を起こさない
申請書、添付書類に不備があると、受付が翌月扱いになってしまいます。
事前に担当部署に相談にし、確認を受けてから提出するようにしましょう。
自己所有の農地を転用する場合、農地法第4条の規定による許可申請書のほかにも、以下のような添付書類を用意する必要があります。
- 申請者が法人である場合には、定款(または寄付行為)の写しおよび法人の登記事項証明書
- 申請にかかる土地の登記事項証明書
- 申請にかかる土地の地番を示している図面
- 転用候補地の位置および付近の状況を示す図面
- 転用候補地に建設しようとする建物または施設の面積、位置および施設間の距離を示す図面
- 転用事業を実施するために必要な資力および信用があることを証する書面
- 所有権以外の権限に基づく申請の場合には、所有者の同意書
- 耕作者がいるときは、耕作者の同意書
- 転用に関連して他法令の許認可等を受けている場合には、その旨を証明する書面
- 申請する農地が土地改良区の地区内にある場合には、土地改良区の意見書
- 転用事業に関連する取水または排水について、漁業権者、水利権者その他関係権利者から同意を得ている場合には、それを証明する書面
- その他参考となるべき書類
登記事項証明書などは、窓口に行けばその日に発行してもらえますし、図面や許可証明などは手元にあればすぐに用意することが可能です。
逆に時間がかかるのは同意書や意見書です。
申請を専門家に委託してしまう
慣れない申請で、用意すべき書類がわからない場合や、窓口に何度も出向いたりする時間がない場合は、専門家に頼んでしまうのも1つの手です。
転用の手続きは行政書士が代行してくれるので、相談してみるとよいです。
支払う報酬は転用の手続きによって変わりますが、市街化区域内農地の転用で届出のみを行う場合には、だいたい3万円〜5万円程度です。
一方で、転用許可が必要な場合には、約5万円〜15万円くらいの費用がかかります。
届出だけで済むならば、個人で行うことも可能です。(書類の発行手数料などの実費だけで済みます)。
しかし、転用許可申請が必要な場合や市街化調整区域の場合などで、手続きが難しい場合は専門家(行政書士等)に頼んだほうがスムーズだと思います。
農地を活用するなら転用後に地目変更を行う
転用の許可を得た上で、新たな用途にあわせた工事が完了したら地目変更をしましょう。
地目とは、土地の登記事項の1つであり、土地の用途による分類を示します。
地目は、法務局の登記官がその土地を総合的かつ客観的に判断して認定することとされており、不動産登記法により23種類に区分されています。
地目変更が必要な理由
無事に転用の許可がおりたとしても、地目は農地のままです。そのままでは住宅を建てることはできません。
したがって、宅地などでの利用を考えている場合には地目の変更が必要です。
地目変更が完了するまでの期間
法務局の窓口で申請する際は、必要書類と印鑑を持参しましょう。
窓口のメリットは、提出前に必要書類の内容について確認・相談できることです。
混雑する法務局によっては、相談の事前予約をとっているところもありますので、直接の相談を希望する場合は事前に法務局に確認しておきましょう。
また、書類を提出したときは、処理が完了する日の目安と手続き終了の連絡有無について確認しておきます。
登記の処理が終了したことを確認したら、窓口で登記済証を受け取ります。
郵送で申請する際は、必要書類をコピーした後で、登記申請書・案内図・農地転用許可証などを重ねてホチキス止めします。
その他の証明書類はホチキス止めせず、原本に「原本還付」という付箋を付けて同封しましょう。
返信用封筒に切手を貼って同封し、封筒の表には自分の宛名のほか「不動産登記申請書在中」と記載します。
また、送付する際は必ず書留郵便で送るようにしましょう。
郵送した書類にミスがなければ、登記についての事務処理が終了すると法務局から登記済証が郵送されます。
これらの処理にかかる期間は、1週間から2週間とされています。
時期によっては法務局の業務も混雑しますので、登記申請や相談は早めに予約をとることをおすすめします。
地目変更に必要な書類
土地地目変更登記の手続きに必須の書類は以下の2つです。
- 登記申請書
- 土地の案内図
さらに、農地を農地以外の地目に変更したい場合は、以下の書類も用意しなくてはなりません。
現地の状況 | 追加書類 |
---|---|
農地以外の場合 | 非農地証明 |
田や畑などの農地の場合 | 農地転用書類 |
農地転用の申請をする際のよくある疑問
状況によっては、転用がスムーズに行われないケースもあります。
そんなときの対応も知っておくと、いざというときにあわてずに済みます。
書類に不備なしでも不許可になる?
転用により近隣の農家とトラブルが発生することが予想される場合は、許可が下りない ケースもあります。
具体的には、隣接農地所有者の承諾がない場合、または近隣農地所有者への説明が不十分と農業委員会に判断された場合で、許可を出した農業委員会や窓口(市役所)等もそういったリスクを避けようとします。
転用許可がおりない農地はどう活用するのか?
不要な農地を有効活用する方法として、農地バンクの利用も検討してみましょう。
農地バンクは農地中間管理機構の通称で、農地集積バンクとも呼ばれます。
平成26年、全都道府県に設置され、中立な立場で農地の貸し・借りを円滑に進める役割をしています。
バンクは、農地を貸したい人から土地を借り受け、新たに農業を始めたい人に貸し付けを行います。
借り手と貸し手それぞれのニーズをくみ取ってマッチングを行う、いわば農地専門の不動産会社のような存在です。
しかし、地域内の話し合いが不十分であったり、手続きが煩雑であったりするなどで、十分に機能しているとは言えない状態だったため、「農地中間管理機構(農地バンク)の5年後見直し」が打ち立てられています。
これにより、今後さらに活用されやすくなると考えられますが、農地がある場所などによっては借り上げてもらえないケースもありますので、事前に必ず確認する必要があります。
一時的な転用でも許可の申請は必要?
砂利の採取や建設残土などの埋め立てなどで、農地を一時的に農地以外に利用する場合があります。
これを一時転用といいますが、この場合も一般的な「農地転用」の申請手続きと同じ対応が必要です。
申請書に工事完了日を記載し、その日までに農地に復元することが条件となり、工事の進捗状況や完了報告も義務付けられます。
期間内で農地転用できるよう書類を作ろう
せっかく相続した農地であっても、農業を続けることができなければ、早めに転用を考えることが有効利用の秘訣です。
ただ、就農している人が転用を行うのは比較的スムーズですが、農業従事者でない場合には難航するケースもあるでしょう。
また、その土地が市街化調整区域である場合は、都市計画法の中で市街化を抑制する区域として扱われているので、通常は家を建てられません。
ほかにも、3年(3作)の間は原則として転用ができなかったり、国の圃場(ほじょう)整備で作られた水田の場合は、8年間宅地への地目変更ができなかったりという制約もあります。
農地転用にかかる制度やスケジュールを把握して、段取り良く転用ができるよう準備しましょう。
場合によっては専門家の助けを借りることも効率的な方法です。
空き地の活用を検討中ならこちらのまとめ記事を読んでみてください。
相続した空き家をどうすればよいのかわからずに放置している人は、毎年、損をしている可能性があります。ここでは、空き家を放置するデメリットや空き家の売却方法を費用も併せて解説しているので、空き家の処分に困っている人は必見です。