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家族や親戚より農地を贈与されたり相続したりした場合、毎年支払う固定資産税が発生します。
固定資産税は、建物や土地の所有者に対し、市町村が提供する行政サービスによる利益を得ているという前提を受け、その利益に応じた負担として支払う税金です。
基本的に農地の固定資産税は宅地よりも安く、自宅の固定資産税を払っている人からすると、離れた場所にあっても「手入れをするより固定資産税を支払った方がお得」という場合もあります。
しかし、中には、宅地並みに課税される農地もあるため、個別の確認が重要です。
ここでは、固定資産税が異なる農地の4つの区分や、農地の固定資産税を計算する方法、支払い方について紹介します。
不安なく税金を支払えるよう準備するためにも、農地の固定資産税について一度考えてみましょう。
また、農地を売却すると検討している方は、農地売買の方法に関して、こちらの記事をご覧ください。
農地は普通に売却することはできません。理由は農地法で制限されているからです。しっかり手順に乗っ取って売却を行わないと、契約そのものが無効になることもあります。農地を相続した場合は、農地が荒れる前に判断できるよう知識をつけましょう。
また、なかなか売れない農地の場合、買取を検討するのがおすすめです。農地の買取方法と流れに関する知識をまとめていたので、ぜひご参考にしてください。
この記事では、不動産会社による農地の買取について、手順や概要を分かりやすく解説しています。農地転用時の許可申請など農地特有の制限や、実際に農地買取を依頼して引き渡すまでの流れなどを解説する他、おすすめの一括査定業者についてもご紹介します。
農地の固定資産税が異なる4つの区分
- 生産緑地
- 特定市街化区域農地
- 一般市街化区域農地
- 一般農地
農地の固定資産税を調べる際は、まずその農地の区分を調べることが大切です。
固定資産税は、「固定資産税評価額×1.4(標準税率)」という式によって計算されます。
しかし、固定資産評価額は、その土地が持つ固定資産としての価値を元にするため、農地であれば「その土地で生産できる作物による収益」が基準となります。
同じ農地でも、例えば、山間の農地と都会の市街地にある農地では、収益性だけでなく、土地そのものの価値も異なります。
そこで、農地は「生産緑地」「特定市街化区域農地」「一般市街化区域農地」「一般農地」の4つの区分に分けられており、それぞれ固定資産税の計算方法が異なります。
農地区分の調べ方について)農地の評価区分には、まず農地評価と宅地並み評価があり、さらに農地の課税区分には農地課税(農地に準じた課税)と宅地並み課税があります。
農地を調べるだけでしたら、以下のサイトがあります。区分については、直接、市町村の役場に行かないとわからない場合が多いようです
参考:全国農地ナビ
生産緑地
生産緑地とは、市街化区域内にある農地のことで、都市計画によって指定されます。指定される条件は生産緑地法第3条において規定されており、次の3つです。
生産緑地の条件
- 公害又は災害の防止、農林漁業と調和した都市環境の保全等良好な生活環境の確保に相当の効用があり、かつ、公共施設等の敷地の用に供する土地として適しているものであること。
- 300平方メートル以上の規模の区域であること。
- 用排水その他の状況を勘案して農林漁業の継続が可能な条件を備えていると認められるものであること。
生産緑地には、農地として管理すること、農地に関する建築物以外の建設は認められていないことなど、さまざまな決まりごとがあります。指定から30年間は、転用が基本的に認められず、農地として使い続けることが前提となっているのです。
しかし、市街化区域内にあっても農地として認められるため、税制上の優遇措置が受けられ、固定資産税の軽減や相続税の納税猶予などが適用されます。
「30年の間に転用したくなったら」どうなるのでしょうか。
原則として転用できません。
ただし、生産緑地指定を解除できる要件として、生産緑地地区に指定されてから30年が経過したときや、農業の主たる従事者が死亡したり、身体的・精神的障害により農業に従事することが不可能になったときは、生産緑地指定の解除を申請することができます。
また、解除手続きの流れは、市に対して買い取り申し出を行います。買い取り申し出後、買取をしない場合は、申出日から起算して約3カ月後に生産緑地の行為制限が解除されます。その後、転用することができます。
特定市街化区域農地
特定市街化区域農地とは、首都圏、中部圏、近畿圏の特定の市の市街化区域内にある農地で、同じ都市にある生産緑地とは異なり、宅地化の可能性が高いことから、農地より宅地に近い固定資産税が課せられ、相続税の猶予もありません。
ただし、付近の宅地と全く同様というわけではなく、同様と認められる宅地の売買価格より、農地を宅地に切り替えた場合の費用を差し引いたものが使用されます。
つまり、宅地並み農地評価額=同様とされる宅地の売買価格-農地を宅地へ切り替えた場合の費用となります。
ただし、現在農地として使用されている場合は、課税対象となる額を1/3にすることが法律で定められています。
該当するかは、市役所のHPなどで確認できるため、自宅から離れていたり、詳細な情報がまだ分からなかったりする場合は、所在地の市町村HPを検索してみましょう。
一般市街化区域農地
上記の特定市街化区域農地に該当しない、市街化区域内の農地のことです。
市街化区域とは、おおむね10年以内に、優先的かつ計画的に市街化を図るべき地域であり、言い換えれば農地から宅地になる可能性が高いと言えます。したがって、上記の特定市街化区域農地と同様に、宅地に近い評価が行われます。
一般農地
上記の3つに該当しない農地であり、具体的には、都市計画区域外の農地や、都市計画区域内の農地のうち調整区域にある農地及び生産緑地の指定を受け、長期的に農業を営むことが前提となっています。
一般農地では、農地の利用を前提としているため、農地の収益性の低さや諸条件を反映させ、調整されるのが特徴です。
農地の固定資産税評価と課税基準
農地の固定資産税は、ここまで解説した4つの区分をまとめると、評価と課税が次のように分かれます。
農地の種類 | 評価 | 課税 |
---|---|---|
生産緑地 | 農地評価 | 農地課税 |
特定市街化区域農地 | 宅地並み評価 | 宅地並み課税 |
一般市街化区域農地 | 農地に準じた課税 | – |
一般農地 | 農地評価 | 農地課税 |
農地としての評価と課税
一般農地と生産緑地は、今後も農業を営む場所として使うことが前提の農地です。
したがって、固定資産税は農地評価となり、農地でどのくらい作物が得られ、収益に繋がるかを基準に評価されます。
しかし、昨今は農地での生産性は低く、土地自体が持つ価値と農業による収益が同じになるとは限りません。
そこで「前年度の課税標準額÷当該年度の評価額」によって算出される負担水準に応じた、負担調整率を適用して課税額が決まります。
負担水準 | 負担調整率 |
---|---|
0.9以上 | 1.025 |
0.8以上0.9未満のもの | 1.05 |
0.7以上0.8未満のもの | 1.075 |
0.7未満のもの | 1.1 |
計算例については、次で詳しく解説するため、あわせてご参照ください。
宅地並評価と課税
宅地並評価とは、今後農地を宅地化する可能性が高い一般市街化区域農地と特定市街化区域農地に適用される評価です。
ただし、農地の周辺にある宅地とまったく同じというわけではなく、同様と認められる宅地から、農地を宅地に変える場合にかかる費用を差し引いたものが、実際の評価額として使われます。
また、評価額は、双方とも宅地並評価ですが、課税は、一般市街化区域農地の課税は、現役で農業を営んでいる農地に限り、負担調整措置として生産緑地や一般農地と同じ課税が適用されます。
一方で、特定市街化区域農地は負担調整措置がなく、宅地並課税が行われます。
また、新しく特定市街化区域農地になった場合は、軽減率が4年間適用されます。
これは農地課税だった場所が、新たに課税の適正化として特定市街化区域農地の指定を受けた場合、負担を減らし、段階的に課税するためのものです。
年度 | 指定された年度 | 2年度目 | 3年度目 | 4年度目 |
---|---|---|---|---|
軽減率 | 0.2 | 0.4 | 0.6 | 0.8 |
特定市街化区域農地の場合、その土地の条件に応じて計算方法が細かく異なる点に注意しましょう。
農地の固定資産税計算方法
ここでは、農地の区分別に、例をあげながら計算方法を解説します。
一般農地と生産緑地の場合
一般農地と生産緑地の場合は、今後も農地として利用される可能性が高いため、固定資産税を低くするための負担調整が行われます。
したがって、宅地並みである本則税率と調整が含まれる調整税率の2つを求め、より低い額が採用されます。
のちほど使われる計算式は下記三つです。
- 本則税額=評価額 × 税率(1.4%)
- 負担水準=前年度の課税標準額÷本年度の課税標準額
- 調整税額=前年度の課税標準額 × 負担調整率 × 税率
それでは、500平方メートルの生産緑地を例に、計算を行ってみましょう。
まずは前提条件として、下記の表の通りです。
項目 | 条件 |
---|---|
農地 | 政令指定都市にある生産緑地 |
農地面積 | 500平方メートル |
売買価格 | 本年度の1平方メートルあたり:1,100円 前年度の1平方メートルあたり:1,000円 |
限界収益修正率 | 0.55 |
固定資産税率 | 1.4% |
上記の前提条件によって、本則税額の計算方法は下記の通りです。
課税標準額:500平方メートル×1,100円×0.55=30万2,500円
本則税額:30万2,500円×1.4%=4,235円
次は負担調整率を計算し、最終の調整税額を計算します。
先述のように負担調整率は、負担水準によって決まります。
前年度の課税標準額:500平方メートル×1,000円×0.55=27万5,000円
本年度の課税標準額:500平方メートル×1,100円×0.55=30万2,500円
負担水準=27万5,000円÷30万2,500円≒0.90
よって負担調整率は、1.025となりますので、最後に調整税額を計算します。
27万5,000円×1.025×1.4%=3,946円
比較すると調整税率の方が安いため、固定資産税は3,946円と分かります。
特定市街化区域農地の場合
特定市街化農地の固定資産税は、まず負担水準が0.8を超えるかどうかで、計算方法が異なります。
- 負担水準=前年度課税標準額 ÷ (今年度価格 × 1/3)
負担水準が0.8を下回る場合
こちらも、本則税率と調整税率の2つを算出し、より低い方を使用します。
この時ポイントとなるのが、現在農地として使っている場合は、課税標準額が1/3になるということです。
ただし、宅地化の可能性が非常に高いことから、負担調整措置は宅地と同様になっています。
- 本則税額=評価額 × 1/3 × 軽減率 × 税率(1.4%)
- 調整税額=(前年度課税標準額 + 本年度の評価額 × 1/3 × 5%) × 税率
それでは、実際に農地として使用されている500平方メートルの特定市街化区域農地の計算例を見ていきましょう。
項目 | 条件 |
---|---|
農地面積 | 500平方メートル |
今年度の所有する農地と同等の宅地の1㎡あたりの売買価格 | 50,000円 |
前年度の所有する農地と同等の宅地の1㎡あたりの売買価格 | 60,000円 |
1平方メートルあたりの整地費 | 700円 |
1平方メートルあたりの地盤改良費 | 1,800円 |
1平方メートルあたりの土盛費 | 6,500円 |
1平方メートルあたりの土止費 | 68,000円 |
土盛りを要する面積は500平方メートル、土止めは道路を除く3面に必要であり長さの合計は75m、平均の高さは1mとしますので、宅地造成費の計算は下記の通りです。
500平方メートル×700円+500平方メートル×1,800円+500平方メートル×6,500円+75m×6万8,000円=960万円
本則税額の評価額は宅地造成費を除いてから計算しますので、計算式は下記の通りです。
(2,500万円-960万円) × 1/3 × 1.4%=71,820円
調整税額の課税評価額も宅地造成費を除くため、計算式は下記となります。
前年度課税標準額:(6万円 × 500㎡ – 960万円) × 1/3 = 680万円
調整税額:(680万円 + 1,540万円 × 1/3 × 5%) × 1.4%=5,180円
負担水準が0.8を超える場合
0.8を超える場合は、本来の税額と据置固定資産税額を比較したいずれか小さいほうですが、原則として前年度の税額と同じ額が求められます。したがって、計算式は次の通りです。
- 本則税額=評価額 × 1/3 × 軽減率 × 税率
- 調整税額=前年度課税標準額 × 税率
一般市街化区域農地の場合
一般市街化区域農地の場合、将来的に宅地化が図られる地域にあるため、現在農地として使われている場合は、宅地造成費用を差し引くことが出来ます。
- 本則税額=評価額 × 1/3 × 税率
- 調整税額=前年度課税標準額 × 負担調整率 × 税率
まず前提条件は下記の通りです。
項目 | 条件 |
---|---|
農地面積 | 500平方メートル |
今年度の所有する農地と同等の宅地の1平方メートルあたり | 5万円 |
前年度の所有する農地と同等の宅地の1平方メートルあたり | 6万円 |
1平方メートルあたりの整地費 | 700円 |
1平方メートルあたりの地盤改良費 | 1,800円 |
1平方メートルあたりの土盛費 | 6,500円 |
1平方メートルあたりの土止費 | 68,000円 |
土盛りを要する面積は500平方メートル、土止めは道路を除く3面に必要であり長さの合計は75m、平均の高さは1mとします。
宅地造成費は下記の通りです。
500平方メートル×700円+500平方メートル×1,800円+500㎡×6,500円+75m×68,000円=960万円
本則税額の計算式はは下記となります。
(2,500万円-960万円) × 1/3 × 1.4%=71,820円
負担調整率は負担水準による決めるため、下記の通りで負担水準を計算します。
前年度の課税標準額:(6万円 × 500㎡ – 960万円)× 1/3=680万円
負担水準:680万円 ÷ 513万円≒1.325
したがって負担調整率は1.025です。
最終的に調整税額を計算します。
680万円×1.025×1.4%=9万7,580円
したがって、本則税額の方が安いため、固定資産税額は7万1,820円と分かります。
農地の条件によっては、計算方法が異なる場合もありますので、より正確な金額を知りたいときは、市町村の税金の窓口が税理士に相談しましょう!
農地の固定資産税の支払い手続き
固定資産税の支払い手続きは、基本的に自宅の固定資産税と変わりません。
課税対象者は1月1日に決定
支払い対象者は、毎年1月1日に決定される固定資産課税台帳に所有者として登録されている人が納税義務者となります。
したがって、それ以降に農地を取得した場合は、支払いは翌年からとなり、本年分は前の所有者に請求が届きます。
農地を転用して宅地にした場合も、毎年1月1日時点での土地の種類で課税が決まるため、急に宅地並みの課税を要求されるわけではありません。
固定資産税を支払うタイミング
年4回(4月・7月・12月・2月)の分納か、1年分の一括払いが原則となります。
納付のタイミングは自治体によって異なるため、分からなくなった場合や納付書を紛失した場合は、各自治体の税務課(課税担当)に早めに相談しましょう。
固定資産税をいつ払うかを詳しく説明しましたので、合わせてご覧ください。
固定資産税の基礎知識から、固定資産税の納期の調べ方や、納期が過ぎた場合の対処法を解説しています。固定資産税の納期が分からないから調べたい、過ぎたらどうなるか知りたいという方におすすめです。また固定資産税の計算方法についても解説しています。
支払い方法は自分で選べる
固定資産税の支払いは、一般的には期間内に銀行や郵便局の窓口で納付します。ただし、市町村によっては、次のような納付方法を用意していることもあります。
- 金融機関及び郵便局等の窓口
- 各自治体の窓口
- 口座振込
- クレジットカード
- コンビニエンスストア
市町村によっては対応していないケースもあるため、事前に確認しておくとよいです。
注意点として、コンビニエンスストアでの納付は、納付金額が30万円以下しか振り込めません。口座振替も、銀行によって限度額が異なることにも注意しましょう。
高額な課税が予想される場合は、早めに金融機関や郵便局などの窓口に相談しておくと安心です。
農地の固定資産税は減税できるのか
農地の固定資産税が家計の負担になる場合は、固定資産税の減免および免税を依頼するという方法もあります。
農地の評価額で免税が適用される
そもそも固定資産税は「建物や土地の所有者に対し、市町村が提供する行政サービスによる利益を得ているという前提を受け、その利益に応じた負担として支払う税金」であるため、生み出される儲けがほとんどない場合は、免税の対象となります。
土地の場合は、課税標準の土地の合計額が30万円未満なら免税されます。例えば、A町に課税標準額が10万円の土地を2つ所有していたとしても、合計で20万円のため税金はかかりません。
そして、土地と家屋は別々に固定資産税が計算されるため、マイホームとしての土地があっても、農地とは別で税金が計算されます。
したがって、農地だけなら免税となる場合も、マイホーム分の固定資産税の支払いは必須です。
災害や生活保護でも減免
課税標準の土地の合計額が30万円未満以外にも、市町村が定める特別なケースに当てはまる場合は、固定資産税の軽減や免除されることもあります。
代表例が「災害や火災による被災者」や「生活保護」を受けている場合です。
例えば、大津市では生活保護者や文化財に指定された土地などが当てはまります。また、横浜市では、災害や天候不順で収穫に損害が出た場合に、減税や免除の対象となります。
ただし、これらは市町村によって条件や減免範囲、減免する税額が異なります。
特に、納税をする農地の所在地が現住所と異なる場合は、対象の自治体の税務課(課税担当)などにあらかじめ問い合わせをしたほうがよいです。
固定資産税の減税制度に関して、こちらの記事で詳しく紹介します。
不動産を所有している人が毎年支払う固定資産税ですが、軽減措置があることをご存知ですか。軽減措置の要件に当てはまれば、税金の負担を減らすことができます。固定資産税の軽減措置について、固定資産税の基礎知識を交えながらご紹介します。
評価額に不服があれば審査を行う
農地の評価額や固定資産税額に不服があれば、文書で固定資産評価審査委員会に申し出ることで、審査について見直しを要求できます。
固定資産税の計算は市町村が行いますが、複雑なため場合によって間違った額が請求されていることもあり、審査請求によって税額が変わる場合もあります。
申し出は、公示の日から納税通知書の交付後3か月まで受け付けられるため、気になる場合は早めに審査の申し出を行いましょう。
農地が抱える2022年問題と固定資産税
- 生産緑地の優遇措置がなくなる
- 手放すのも難しくなる可能性
- 政府の対策により回避できる可能性
農地を不動産的な観点から見た問題として、2022年問題があげられます。固定資産税にも関わる内容であり、特に「生産緑地を所有する人」や「農地の売却を検討する人」は、注意しておきたい問題です。
生産緑地の優遇措置がなくなる
生産緑地は農地として使い続ける代わり、1992年よりここまで解説してきたように固定資産税が安くなるなど農地としての優遇措置が設置されています。
ただし、生産緑地として指定されるのは30年間と決められています。生産緑地でなくなると、税制面の優遇措置がなくなり、宅地並みの固定資産税や都市計画税の支払いが求められます。
本来は「指定から30年が過ぎた時点で土地が所属する市町村が買い上げる」と生産緑地法で決められていましたが、近年の財政悪化から買い上げは難しいと考えられています。
買い上げが難しいとなると、固定資産税など負担が増えるだけの農地を手放し、売りたいと考える人が自然と増え、土地が一気に不動産市場へ出回る可能性が高まっているのです。
2022年は、1992年の制度開始よりちょうど30年を迎えるため、これを「2022年問題」といい、注目が集まっています。
手放すのも難しくなる可能性
土地が大量に市場に出回ると、土地を欲しい人に対し土地が多くなりすぎ、売りたいのに売れなくなるという問題があげられます。
生産緑地は、都市部にあるため、本来なら欲しいと感じる人も多い場所です。しかし、同じように土地を手放す人が増えると、より立地の良い方を選ぶ人が増えます。すると、早く売りたい場合は、少しでも選んでもらえるように、価格を安くせざるを得ません。
その結果、土地の価格が全体的に下がる恐れが生じます。また、手放すのに長い時間がかかり、その間の固定資産税の支払いや不動産会社への仲介手数料など、費用がかさむ可能性もあるのです。
政府の対策により回避できる可能性
政府はこの問題を回避し、同時に農地を保護するために対策を講じています。
例えば、2017年には、特定生産緑地指定制度を制定しました。
生産緑地の指定が解除される土地を、特定生産緑地としてもう一度指定できる制度です。税制面の優遇措置を10年延長できるため、まだ農業を続けられる場合には、視野に入る制度でしょう。
また、都市農地賃借法ができたことで、それまで貸し借りができなかった生産緑地でも、農地として以外の収益化を見込めるようになりました。したがって、農地の保持が以前よりしやすくなっているとも言えます。
生産緑地に関する2022年問題は、こちらの記事をご覧ください。
「生産緑地の2022年問題」とは、生産緑地の買取り申請が2022年以降に可能となることで農地の売却が増加し、不動産価値が下がるリスクのことをいいます。生産緑地法改正によりリスクは減少したものの、農地転用は徐々に進むと見られており、対応の検討が必要です。
農地の固定資産税を把握しよう
固定資産税について詳しく調べると、さまざまな制度から成り立っていることが分かります。
固定資産税は金額が大きくなりやすいだけでなく、継続して定期的に納税が求められるため、家計にとって負担となることもしばしばです。
農地を引き継ぐ場合、その後かかる固定資産税の支払いについても検討し、今後も維持するのであれば計算をして、あらかじめ用意しておくのもひとつの手です。あるいは、計算した結果、固定資産税の支払いが家計の負担になるようであれば、早めに売却に踏み切るのも良いでしょう。
ただし、市街地にある農地は、生産緑地のように宅地化が難しいケースもあるため、個別の対応が求められます。
農地に詳しい不動産会社へ相談することも視野に入れながら、まずは自身の受け継ぐ農地の固定資産税について、調べてみましょう。