【原価法とは】計算式や査定方法についてわかりやすく解説

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「原価法ってどんな査定方法?」
「原価法で査定するメリットはどんなことがあるの?」

原価法は不動産鑑定の手法の1つで主に建物の査定に使われます。

不動産売却を考えているのなら、原価法の査定手順や計算方法を知っておくと便利です。

ここでは、原価法について、原価法の査定手順や計算方法、原価法のメリット、デメリットを解説します。

原価法の仕組みを知って、不動産査定への知識を身につけましょう。

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原価法とは

原価法とは、不動産の再調達原価(再調達価格)をもとに対象不動産の試算価格を求める方法です。

不動産鑑定の手法には、「原価法」の他に「取引事例比較法」「収益還元法」があり、査定物件によって求める手法が変わりますが、複数の方法を使って多角的に決めることもあります。

ここでは、不動産鑑定方法の1つである原価法について、取引事例比較法や収益還元法についても解説します。

原価法とは

原価法では、今建っている建物を取り壊したと仮定して、全く同じ建物を建て直した場合にいくら費用がかかるかを計算して価格を求めます。

国土交通省が公表している不動産鑑定評価基準には下記のように記されています。

「原価法は、価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価

について減価修正を行って対象不動産の試算価格を求める手法である(この手法

による試算価格を積算価格という。)。

原価法は、対象不動産が建物又は建物及びその敷地である場合において、再調

達原価の把握及び減価修正を適切に行うことができるときに有効であり、対象不

動産が土地のみである場合においても、再調達原価を適切に求めることができる

ときはこの手法を適用することができる。」

引用: 国土交通省 不動産鑑定評価基準

建て直しのための原価を再調達原価といい、そこから経過した年数に応じて価値が低下していれば低下分を差し引き、リフォームなどで価値が上がっている場合は価格を上乗せして算定されます。

この原価法による試算価格は「積算価格」と呼ばれます。

原価法は建築費等の費用から算定するので、費用性に着目した手法であり建物の査定によく用いられる査定方法です。

原価法以外の査定方法

「原価法」以外の査定方法には、「取引事例比較法」「収益還元法」があります。

それぞれの特徴について解説します。

取引事例比較法

取引事例比較法とは、売却したい不動産と類似した物件の取引事例を参考にして価格を査定する手法のことです。

取引事例比較法は、過去の取引事例を参考にして価格を査定するので不動産の市場性に着目した手法であるといわれ、土地や区分マンション等の価格を求める際に用いられます。

取引事例比較法では、まず類似物件の取引事例を収集して標準値の単価を求めます。

さらに、事情補正や時点修正を行なうなど、その土地の特性を比較した上で不動産価格を決定します。

取引事例比較法は、過去の取引事例を参考に価格を決定する方法なので、類似物件の売買例がある場合は相場に近い価格を算定できる査定方法です。

取引事例比較法について知りたい方に向けて、こちらの記事で「取引事例比較法の計算式や査定方法」をまとめています。合わせてご覧ください。

収益還元法

収益還元法は、その不動産が将来どれくらいの利益を生み出すのかをもとに査定する方法です。

収益還元法は、さらに直接還元法とDCF法に分かれています。

直接還元法では、一定期間の純収益を投資利回りで割って評価額を算出し、DCF法では投資対象不動産の保有期間中に得られる純収益を現在評価額に割引計算した額と、保有期間終了時の不動産売却によって得られる予想額を、現在評価額に割り戻した額との合算で算出する方法です。

収益還元法は、不動産が生み出す利益から価格査定する方法で、利益性に着目した手法なので、投資物件の価格を求めるのに利用されます。

収益還元法は日本ではあまり普及していませんでしたが、海外では一般的な評価法で、「不動産評価のグローバルスタンダード」と呼ばれています。

今後不動産投資が広がるにしたがって、収益還元法を用いて査定をするケースも増えると考えられています。

収益還元法について知りたい方に向けて、こちらの記事で「収益還元法の算定方法や計算方法」をまとめています。合わせてご覧ください。

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原価法による査定手順

原価法は建物の査定によく使われる方法ですが、建物だけでなく土地の査定額を算出することもできます。

ここでは、実際の原価法での査定手順について解説します。

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再調達原価を調べる

再調達原価とは、査定する不動産を再び建て直した場合に必要な費用のことです。

査定する不動産が建物であれば、造成費と工事費などの付帯費用を加算し、土地に建物が建っている場合は土地の再調達原価や借地権の価格に建物の再調達原価を加算します。

再調達原価を求める方法には、「直接法」と「間接法」とがあります。

直接法は、鑑定を行う不動産から直接求める方法で、標準的な工事費 + 発注者が負担すべき通常の付帯費用で算定することができます。

直接法では、使用されている建材や工事で生じた人件費、施工会社の利益など、発注者が請負業者に払う標準的な費用を求め、さらに発注者が負担する付帯費用を加算する必要があるので、設計図書や請負契約書が存在する場合のみ査定できます。

一方、設計図書や請負契約書がない場合は間接法で計算します。

間接法では、周辺の不動産価格から工事にかかる費用を類推して計算します。

より正確な査定結果を求めるためには、直接法と間接法の両方を併用することもあります。

減価修正を行う

再調達原価を計算したら、それを減価修正します。

再調達原価は、不動産を新築で建て直した場合の価格となるので、実際に査定する物件の劣化状況に応じて価値の下落を算出する必要があります。

このように築年数に応じた価値の下落を算出することを減価修正と言います。

減価修正では、まずは下記の法定耐用年数を用いて経年に伴う劣化を算定します。

構造法定耐用年数
鉄骨鉄筋コンクリート造47年
鉄筋コンクリート造47年
鉄構造34年
計量鉄構造19年
木造22年

次にひび割れやデザインなどの劣化に伴い不動産市場における価値が下がっていないかを算定し査定します。

修正すべき減価には、「物理的減価」「機能的減価」「経済的減価」の3種類があります。

  • 物理的減価 建物の経年劣化に伴うひび割れや摩耗、損壊などの物理的に価値が減った部分
  • 機能的減価 不動産の性能としては問題がなくても、デザインが古くなるなど機能性の価値が減った部分
  • 経済的減価 周辺の住環境と整合しなくなり経済性の価値が減った部分。一方で古民家など評価が増す可能性もある

不動産市場の状況を考え、減価している部分を査定します。

価格補正

減価修正をしたら、原価法の計算で評価できない部分を価格補正します。

不動産の査定では、立地や周辺環境、内装などの部分も査定に影響します。

価格補正では、下記のようなポイントで価格補正を行いましょう。

  • エリアの人気
  • 駐車場の有無
  • リフォーム有無
  • 規模

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原価法の実際の計算方法

原価法で試算した価格のことを積算価格と言います。

原価法で計算する場合は、下記のように積算価格を求めます。

積算価格=単価×総面積×残存年数(耐用年数-築年数)÷ 耐用年数

例えば、平成16年に建築された築18年の面積100㎡の木造の建物を原価法で査定すると仮定しましょう。

まずは、再調達原価を算定するために単価×総面積を計算します。

単価が分からない場合は、国税庁の「建物の標準的な建築価額表」を参考に求めることもできます。

下記の表を参考にすると、平成16年に建築された木造物件の1㎡あたりの単価は約15万円となるので15万円×100㎡で1,500万円が再調達原価となります。

次に、残存年数(耐用年数-築年数)÷耐用年数の計算をして減価修正を行います。

この場合、木造建物の耐用年数は22年、築年数は18年で計算するので、残存年数は4年となり、4÷22=約0.18となるので、1500万円×0.18=270万円が積算価格になります。

建物の標準的な建築価額表(単位:千円/㎡)

建築年木造木骨モルタル鉄骨鉄筋コンクリート鉄筋コンクリート鉄骨
1975年(昭和50年)67.7126.497.460.5
1976年(昭和51年)70.3114.698.262.1
1977年(昭和52年)74.1121.8102.065.3
1978年(昭和53年)77.9122.4105.970.1
1979年(昭和54年)82.5128.9114.375.4
1980年(昭和55年)92.5149.4129.784.1
1981年(昭和56年)98.3161.8138.791.7
1982年(昭和57年)101.3170.9143.093.9
1983年(昭和58年)102.2168.0143.894.3
1984年(昭和59年)102.8161.2141.795.3
1985年(昭和60年)104.2172.2144.596.9
1986年(昭和61年)106.2181.9149.5102.6
1987年(昭和62年)110.0191.8156.6108.4
1988年(昭和63年)116.5203.6175.0117.3
1989年(平成元年)123.1237.3193.3128.4
1990年(平成2年)131.7286.7222.9147.4
1991年(平成3年)137.6329.8246.8158.7
1992年(平成4年)143.5333.7245.6162.4
1993年(平成5年)150.9300.3227.5159.2
1994年(平成6年)156.6262.9212.8148.4
1995年(平成7年)158.3228.8199.0143.2
1996年(平成8年)161.0229.7198.0143.6
1997年(平成9年)160.5223.0201.0141.0
1998年(平成10年)158.6225.6203.8138.7
1999年(平成11年)159.3220.9197.9139.4
2000年(平成12年)159.0204.3182.6132.3
2001年(平成13年)157.2186.1177.8136.4
2002年(平成14年)153.6195.2180.5135.0
2003年(平成15年)152.7187.3179.5131.4
2004年(平成16年)152.1190.1176.1130.6
2005年(平成17年)151.9185.7171.5132.8
2006年(平成18年)152.9170.5178.6133.7
2007年(平成19年)153.6182.5185.8135.6
2008年(平成20年)156.0229.1206.1158.3
2009年(平成21年)156.6265.2219.0169.5
2010年(平成22年)156.5226.4205.9163.0
2011年(平成23年)156.8238.4197.0158.9
2012年(平成24年)157.6223.3193.9155.6
2013年(平成25年)159.9258.5203.8164.3
2014年(平成26年)163.0276.2228.0176.4
2015年(平成27年)165.4262.2240.2197.3
2016年(平成28年)165.9308.3254.2204.1
2017年(平成29年)166.7350.4265.5214.6
2018年(平成30年)168.5304.2263.1214.1
2019年(平成31年/令和元年)170.1369.3285.6228.8

引用: 国税庁 令和3年分譲渡所得の申告のしかた【参考2】建物の標準的な建築価額表及び給与所得金額の計算表など 

原価法のメリット

原価法は建物の査定をする上で、メリットの多い鑑定方法となっています。

ここでは、原価法のメリットについて解説します。

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建設時の費用がわかれば算出可能

原価法のメリットは建設時の費用がわかれば簡単に算出できることです。

設計図書や請負契約書が存在すれば、自分でもおおよその価格を査定することができます。

建物は建築資材などの建築費によっても価値が大きく変わります。

そのため、建築費を元に査定する原価法を用いるとより正確な査定を行うことができるのです。

特殊な物件でも査定できる

原価法は、特殊な物件でも査定ができるメリットがあります。

不動産鑑定方法の1つである取引事例比較法では、売買事例のデータを元に査定をするので類似の売却データが必要となります。

原価法を用いれば、類似物件の売却データがないような特注な物件でも査定できますし、不動産売買が活発でない地域でも査定が可能となります。

原価法のデメリット

原価法にはメリットだけでなくデメリットもあります。

原価法で査定するならデメリットの部分もしっかり把握しておきましょう。

建物費用がわからなければ算出できない

原価法のデメリットは建築費用が分からなければ、正確な算定ができないことです。

建設時の記録がなければ、直接法で査定することができず、周辺の不動産価格から工事にかかる費用を類推して計算する間接法で査定することになります。

間接法での査定は、直接法に比べて正確な査定額とならない可能性があるので注意が必要です。

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取引事例比較法に比べて精度が落ちる可能性がある

原価法のデメリットは、取引事例比較法に比べて精度が落ちる可能性があります。

取引事例比較法では、実際の売却データを元に査定するので比較データが多ければ売却価格に近い査定額の算定が可能です。

一方で、原価法は建物の建築費をもとに査定しますが、再調達原価からどの程度の減価調整や価格補正が行われるのかは、不動産会社によって差が出ることも考えられます。

不動産を売却するときには、複数の会社の査定を受けて比較検討する必要があります。

不動産売却なら不動産一括査定がおすすめ

原価法は建設費用を元に不動産を査定する方法で、建物の査定によく用いられる鑑定方法です。

建築時の費用がわかれば算定できるので簡単に査定することができますが、取引事例比較法に比べると精度が落ちる可能性があります。

不動産の売却を考えるなら、複数の不動産会社に査定依頼をして納得して手続きを進めることが大切です。

不動産の査定を考えるのなら、多数の不動産業者に一括で査定依頼ができる一括査定サービスの利用を検討しましょう。

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