不動産の権利書とは?所有権移転登記方法と紛失時の対処まで解説

土地や住宅といった不動産の所有者には、不動産の情報が記載された権利書が交付されます。

普段はあまり目にすることのない権利書ですが、保管場所をきちんと覚えていますか。

権利書は、不動産の所有権を示す効力はないものの、相続や贈与で所有権を移転登記する際に用いられる大切な書類です。

この記事では、権利書に関する基礎知識と共に、所有権移転登記の手続きや費用について解説していきます。

この記事の監修者

黄 威翔/宅地建物取引士

黄 威翔/宅地建物取引士

この記事の監修者プロフィール
台湾出身。日本で不動産業と出会い、一年目で宅地建物取引士を取得。 地方の不動産会社に長年勤務し、日本全国の中古不動産の売買仲介を担当。
 日本の方はもちろん、外国の方の対応経験も豊富で様々な視点から日本の不動産市場をご紹介しています。

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不動産の権利書について

不動産の権利書について

一般的に「権利書」と呼ばれている書類は、正式名称ではありません。

正しくは、「登記済権利書」や「登記識別情報」と呼ばれています。

なぜ呼び方が異なるかというと、新旧の2種類が存在するからです。ここでは、権利書の基礎知識について解説していきます。

不動産の権利書には新旧の2種類がある

登記済権利書と登記識別情報

2005年に不動産登記法が改正され、登記情報が電子データ化されたため、現在では新旧2種類の権利書が存在します。

どちらも権利書には変わりないものの古い権利書は紙媒体で管理され、新しい権利書はデータで管理されているという点が大きく異なります。

登記済権利書

1899年(明治32年)から2005年(平成17年)に法律が改正されるまでの約100年間は、手書きの登記済権利証が使用されていたという経緯があります。

登記手続き後、登記申請書の写しに朱色の「登記済」という印鑑と登記した年月日受付番号がスタンプされて各所有者に交付されていました。

登記済権利証は和紙などが使用された紙媒体となっており、登記名義人が所有者であることを証明する書類です。

特に、古い登記済権利証は筆による手書きで交付されていたため、記載されている文字の判別が難しいケースもあると言われています。

登記識別情報

法律が改正された2005年3月7日以降は従来の登録済権利証が廃止され、データベースによる登記識別情報に切り替えられました。

同時にオンラインでの登記申請ができるようになりました。

登記名義人が所有者であることを証明するといった法律的な位置づけは変わらないものの、英数字を組み合わせた12桁のパスワードで管理されていることが特徴です。

登記識別情報は、パスワードの部分がシールや袋とじで目隠しされており、折り込み部分は開封せずにそのまま保管するのが一般的です。

登記識別情報の制度が導入されていない一部の法務局では、登記手続きの際に登記済権利証の添付が必要でした。

黄 威翔/宅地建物取引士
黄 威翔/宅地建物取引士

今は、すべての法務局で同夕されていると思いますが。また、電子データ化されていない情報については、登記済権利書が必要になります。

不動産の権利書は所有権そのものではない

登記済権利証や登記識別情報は一般的に「権利書」と呼ばれているため、不動産に対する所有権を証明できる書類だと考えがちです。

しかし、権利書には不動産の所有権そのものを証明する効力はありません。

なぜなら権利書は、あくまでも不動産の権利者であることを証明する書類だからです。

そのため権利書を紛失したとしても、同時に所有権を失う訳ではありません。

なお、権利書を紛失した際の対処法は以下の章で詳しく解説していきます。

土地と建物の2つの権利書が存在する可能性がある

権利書は1つの不動産に対して交付されるため、戸建住宅のように土地と建物をそれぞれ所有している場合は別冊になっている可能性があります。

ただし、戸建て住宅を建売で購入した場合は、1冊にまとめられているケースもあります。

そのため土地の購入後に建物を建てた場合は、どのような状態で保管されているかを今一度確認してみることをおすすめします。

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権利書の所有権の移転登記をする場合

権利書の所有権の移転登記をする場合

不動産を売買する予定がなければ、権利書をあまり目にすることはないでしょう。

しかし、予期せぬ贈与や相続で所有権を移転登記する可能性もあるため、普段から保管場所をきちんと把握しておくことが大切です。

所有権移転登記は、次の流れで進めていきます。

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所有権移転登記が必要になる場面

所有権移転登記とは、要するに不動産の名義変更に伴う手続きのことを指しています。

この手続きが必要になるシーンは、次の4つが挙げられます。

  • 売買
  • 遺贈
  • 贈与
  • 相続

これらのうち、最も多いのは売買の時です。

例えば、土地や住宅を購入する場合、当然ながら売り手から買い手に所有権が移ります。

所有権移転登記には、不動産の所有者を明らかにすることで、売買に関するトラブルを防ぎ、固定資産税の請求先を明らかにする目的があります。

相続が発生した場合には、様々なトラブルを避けるためにも、所有権移転登記を速やかに行うことをおすすめします。

自分で登記手続き可能だがプロに任せるのがベスト

所有権移転登記は、必要書類を準備さえすれば、支局や出張所を含む法務局にて自分で手続きできます。

ただ、所有権移転登記は法律に沿って手続きをしなければなりません。

例えば、必要書類の作成や戸籍を読み解き、登録免許税の計算などをしなくてはなりません。

さらに、支局や出張所を含む法務局は平日しか対応していないため、仕事を持つ人にはなかなか難しい手続きだと言えるでしょう。

そのため、所有権移転登記の手続きは、登記の専門家である司法書士に任せることをおすすめします。

司法書士に依頼すると、面倒な手続きを請け負ってくれるので安心です。

所有権移転登記の流れ

所有権移転登記の手続きは、次のような流れで進めていきます。

所有権移転登記の流れ

相続の開始や売買契約が締結すると、所有権移転登記に必要な書類を収集し、全て揃っていることを確認します。

対象の不動産が居住地から遠方にある場合、市町村役場から必要書類を郵送でも取り寄せられます。

ただし、窓口で申請するよりも時間を要するため、早目に手続きするようにしましょう。

必要書類が揃ったら支局や出張所を含む法務局で登記申請を行い、登記事項証明書を取得して所有権移転登記は完了します。

相続の場合、所有権移転登記の手続きは法律上の期限や締め切りはないものの、発生から10カ月以内に完了するのが望ましいとされています。

一方で、売買による所有権移転登記の場合、売買の代金が支払われ、引き渡しと同時に登記移転する必要があります。

所有権移転登記にかかる費用

所有権移転登記にかかる費用

所有権移転登記の手続きは無料ではなく、次のように税金や手数料などの費用が掛かるので注意が必要です。

登録免許税

登録免許税は、所有権移転登記をはじめ、資格の登録や認定などの手続きに課せられる税金のことを指しています。

所有権移転登記の場合は固定資産税評価額によって税額が異なります。

1.まずは固定資産税評価額を把握する

所有権移転登記にかかる登録免許税を算出する際には、まずは対象となる不動産の固定資産税評価額を把握しなければなりません。

所有している不動産に対する固定資産税評価額は、毎年4月に送付される固定資産納税通知書の「価格」または「評価額」の欄に記載されています。

固定資産税納税通知書の紛失などで、固定資産税評価額がわからない場合は、市区町村役場で固定資産税評価証明書の取得や固定資産課税台帳の閲覧することで調べることができます。

2.固定資産税評価額に税率をかける

固定資産税評価額を確認したら、次のように固定資産税評価額に税率を乗じて登録免許税を算出します。

不動産取得の場合の登録免許税の計算式
固定資産税評価額×税率

税率は一律ではなく、次のように所有権移転登記が必要になった事由によって異なります。

なお、土地の売買では2021年(令和3年)3月31日までの手続き、建物の場合は2020年(令和2年)3月31日までに取得した場合は軽減税率が適用されます。

事由 税率 軽減税率(土地) 軽減税率(建物) 軽減税率(特定の建物)
売買 1,000分の20 1,000分の15 1,000分の3 1,000分の1
相続 1,000分の4 1,000分の3 1,000分の1
その他 1,000分の20 1,000分の3 1,000分の1

軽減税率が適用される建物のうち特定の建物とは、次のような住宅用家屋が該当します。

固定資産税評価額の軽減税率が適応される条件

司法書士への報酬

所有権移転登記を司法書士に依頼する場合、司法書士への報酬を支払わなければなりません。

報酬額は次のように所有権移転登記が必要になった事由によって異なります。

事由 相場
売買 40,000円程度
贈与 30,500円程度
住宅ローンに伴う抵当権の設定 30,000円程度

報酬額は司法書士が在籍する事務所によって異なるため、複数の司法書士事務所に見積もりを依頼して料金を比較すると良いでしょう。

司法書士への報酬は少額ではないので、できるだけ抑えたいところですが、登記手続きにどの程度動いてくれるかも比較して選ぶことが大切です。

その他の雑費

所有権移転登記には、登録免許税や司法書士への報酬だけでなく、手続きに必要な書類を揃えるために費用が掛かります。

費用は高額ではないものの、ある程度把握しておくと安心です。

項目 相場(支局や出張所を含む法務局の窓口) 相場(オンライン請求)
登記簿謄本 600円程度 500円程度
印鑑証明書 450円程度 400円程度
住民票 300円程度
戸籍謄本 450~700円程度

なお、これらの書類は支局や出張所を含む法務局で請求できますが、自宅などからオンラインでも請求できます。

オンライン請求の場合、支局や出張所を含む法務局の窓口で取得するよりも手数料がお得です。

さらに遠方の支局や出張所を含む法務局で住民票や戸籍謄本を取得場合、郵送費や交通費が掛かります。

この他には売買契約書に貼付するための印紙を購入しなければならず、税額は次のように売買契約書に記載された金額によって異なります。 

売買契約書に記載された金額 印紙税額 軽減後の印紙税額
50万円超100万円以下 1,000円 500円
100万円超500万円以下 2,000円 1,000円
500万円超1,000万円以下 10,000円 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 20,000円 10,000円
5,000万円超1億円以下 60,000円 30,000円

なお、2020年(令和2年)3月31日までに作成された売買契約書に対しては、印紙税が軽減されます。

所有権移転登記に必要な書類

所有権移転登記に必要な書類

手続きに必要な書類はさまざまですが、所有権移転登記が必要になった事由によって異なります。

書類に不備があると適切に処理されないため、早目に準備しておくことが大切です。

売却または贈与や財産分与の場合に必要な書類

不動産の売却、または贈与や財産分与で所有権移転登記を行う場合、次の書類を準備しなければなりません。

売却または贈与や財産分与の場合に必要な書類

義務者とは売却などで不動産を譲る側を指しており、権利者とは新たに不動産を取得する側を指しています。

売却や贈与ではどちらか一方ではなく、義務者と権利者に関わる書類を揃えなければならないため、双方の協力が求められます。

なお、印鑑証明書や住民票は発行から3カ月以内のものに限られるため、必要以上に早く取得しないように注意が必要です。

黄 威翔/宅地建物取引士
黄 威翔/宅地建物取引士

印鑑証明と住民票は市町村役場の窓口で、固定資産評価証明書は法務局で取得しますが、手元にある固定資産評価通知書や固定資産税の課税明細書で代用可能な場合が多いです。

相続の場合に必要な書類

相続の場合、次の書類を準備する必要があります。

相続の場合に必要な書類一覧

不動産は現金のように相続人全員で平等に分割できないため、トラブルに発展しがちです。

そのため相続が発生したら速やかに遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成しておきましょう。

権利書を紛失してしまった場合

権利書を紛失してしまった場合

直近で売買や相続の経験がないと、権利書の保管場所がどこかわからなくなる可能性もあります。

どこを探しても権利書が見つからないなど、紛失してしまうケースも考えられます。

このような場合、どのように対処すれば良いのでしょうか。

権利書は再発行できない

例えば運転免許証を紛失した場合、各都道府県の運転免許センターや警察署で所定の手続きをすれば再発行してもらえます。

一方で権利書を紛失した場合、法律上では再発行できないので注意が必要です。

ただし、所有者が変更された場合に限り、新たな所有者名義で登記識別情報が新規で交付されます。

そのため新たに登記識別情報が交付された場合には、今度こそ紛失しないように大切に保管しておきましょう。

紛失しても悪用される可能性は低い

権利書が盗難されると、勝手に売買されるのではないかと不安になります。

しかし、万が一盗難に遭っても権利書だけでは自由に売買されないので安心です。なぜなら、不動産の売買には次のような理由があるからです。

権利書を紛失しても悪用される可能性が低い理由

このように、権利書だけを紛失しただけでは悪用されるリスクが低いことがわかります。

また、権利書の紛失が発覚した時点で法務局に不正登記防止の申請書を提出すると、3カ月間は不正な登記がないか見張ってくれます。

紛失した際の対処方法

権利書を紛失した場合、売却や相続に関する手続きが行えないのではないかと考えがちです。

しかし、次のような方法を用いれば売却や相続に関する手続きが進められます。

権利書を紛失した際の対処方法

司法書士または弁護士による本人確認

権利書を紛失した状態で売却や相続する場合、司法書士や弁護士といった専門家に本人確認してもらうことで所有権移転登記の手続きを進められます。

本人確認は、主にヒアリング調査と書類確認で行われます。

ヒアリングでは不動産を取得した経緯や権利書を紛失した理由を聞かれ、それらの情報を基に売買契約書や領収書によって裏付けされます。

専門家による本人確認は決して難しい作業ではありませんが、本人確認情報の作成料として5~10万円程度の費用がかかります。

登記所の事前通知

事前通知とは、本人確認のために登記所が所有者に対して郵送で問い合わせを行うことを指しています。

登記所から所有者の住所へ本人限定受取郵便の事前通知が届き、実印を押印することで本人確認が行われます。

登記所の発送から2週間以内に申し出すると、所有者名義人であることを確認してもらえる仕組みとなっています。

なお、海外に居住している場合は登記所の発送から4週間以内の申し出に延長されています。

しかし、不動産を購入する際に登記所の事前通知制度を利用する際には、大きなリスクが潜んでいます。

なぜなら売り手が事前通知制度を利用する場合、きちんと期限内に返送しなければ登記申請が下りず、所有権移転登記ができないからです。

したがって、売り手が権利書を紛失したために事前通知制度を利用する際には注意が必要です。

公証人役場による認証の提供

権利書を紛失した場合でも、公証人役場による認証を受ければ、所有権移転登記の手続きが進められます。

公証人役場は法務省が管轄する役所で、全国に約300カ所あります。

ここでは、離婚に伴う養育費の契約といった公正証書の作成が依頼できるため、多くの人が利用しています。

公証人役場には、法的資格を持ったスタッフが在籍しており、所有者本人であることを認証してもらいます。

予め司法書士に対する登記申請代理の委任状や登記原因証明情報などの書類を作成し、公証人役場に持参すると受け付けてもらえます。

所有者本人には、公証人の面前で書類への署名と実印の押印が求められます。

その後、公証人は所有者本人の署名であることを認めた認証文を作成します。

ただし、承認分の作成には10,000円程度の費用がかかり、受付から公正証書の作成までに1~2週間程度の期間が必要です。

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権利書を紛失しても慌てない

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権利書は不動産の所有者を明らかにするための書類ですが、所有権そのものだと捉えられがちです。

しかし、権利書には所有権を証明する効力はないため、万が一紛失しても慌てる必要はありません。

ただし、紛失すると専門家や公証人役場にて本人確認を行ってもらう必要があるなど、手続きが何かと面倒で費用もかかります。

そのため不動産の売買や相続に備えて、権利書の保管場所はきちんと把握しておくことが大切です。