
土地やマンションといった不動産を売却する場合、不動産会社に仲介を依頼するのが一般的です。
売却の準備を始める際に、不動産会社から「登記事項証明書」の取得を求められます。
これは、売却する不動産が所有者本人のものであることを確認するために必要となります。
なぜこのような確認が必要かというと、相続した不動産の名義変更をしていないと親族などに勝手に売却されてしまうケースがあるからです。
このように、登記事項証明書は不動産の売買において重要な書類の一つです。
これから不動産の売却を検討している人は、登記事項証明書について理解を深めておきましょう。
登記簿謄本と登記事項証明書の違い
登記事項証明書は、登記簿謄本という呼び方をする場合があります。
ここでは、登記簿謄本と登記事項証明書の違いについて詳しく解説していきます。
データ化されたものが登記事項証明書
従来は、不動産情報を登記したもの(帳簿)が「登記簿」として保管されていて、その内容を証明するために登記簿を写して発行されたものが「登記簿謄本」でした。
登記簿の内容がデータ化されたため、その内容を発行したものが「登記事項証明書」です。
2008年にはほとんどの不動産情報がデータ化されており、これをきっかけに「登記簿謄本」は「登記事項証明書」という呼び方に変更されています。
現在、発行される証明書は「登記事項証明書」あるいは「全部事項証明書」と呼ばれています。
ただし、「登記事項証明書」のことを指していても、従来からの名残で「登記簿謄本」という呼び方をするケースもあります。
表記のされ方が異なる
登記簿謄本と登記事項証明書は、表記のされ方が異なります。
登記簿謄本は縦書きで、登記事項証明書は横書きです。
登記簿謄本と登記事項証明書は呼び方や表記の仕方が異なるものの、証明内容に違いはありません。
不動産の売買においては、次の4つの情報がわかれば十分です。
また、データ化された後の登記事項証明書を取得する場合、磁気ディスクに記録された内容を印刷して発行されます。
一方でデータ化されていない場合、その内容を複写して発行されています。
登記簿謄本でしかわからないこともある
登記簿謄本のデータ化に伴い、国内のほとんどの不動産情報は磁気ディスクに記録されて登記事項証明書として発行されています。
しかし、場合によっては登記簿謄本でしかわからないこともあります。
登記簿謄本の内容はデータ化されているものの、全ての情報がデータ化されている訳ではありません。
そのため、登記事項証明書で全ての情報が得られるとは限らないのが実情です。
登記識別情報について
不動産を売買する際に必要な書類として、登記事項証明書の他に「登記識別情報」があります。
「登記識別情報」は、申請人自らが登記名義人として登記申請をした場合に法務局より通知されるもので、登記の名義人が何らかの登記手続きをする際に、所有者本人であることを証明するために必要な情報です。
登記識別情報の内容は英数字の組み合わせとなっており、登記事項証明書のように不動産の内容が記されている訳ではありません。
登記簿謄本と同じく、データ化に伴って従来の「権利証」から「登記識別情報」に呼び方が変わりました。
不動産に関する登記事項証明書の種類は4つ
不動産に関する登記事項証明書の種類は1つではないため、申請する前にどの証明書が必要なのかをきちんと確認しておくことが大切です。
ここでは、不動産に関する登記事項証明書を4種類紹介していきます。
種類 | 内容 | 必要なとき |
---|---|---|
全部事項証明書 | 過去を含めて現在までの権利関係といった登記事項全て |
|
現在事項証明書 | 現在において効力のある登記事項だけ記載 | 金融機関から借り入れる際など、過去の不利な情報を知られたくないとき |
所有者証明書 | 不動産の所有者の名義や住所が記載 | 新築や増築の建物表題登記申請のとき |
閉鎖事項証明書 |
すでに閉鎖されていて全部事項証明書に記載されていない登記事項が全て記載 |
過去にその土地がどのような使われ方をしていたのか、や、過去の権利関係を知りたいとき |
全部事項証明書
全部事項証明書は、不動産の売買において、所有権の移転や抵当権を設定する際に必要です。
この証明書には、過去を含めて現在までの権利関係といった登記事項が全て記載されています。
不動産の売買だけでなく、相続による所有者の名義変更や住宅ローンの申請といったシーンでも用いられます。
現在事項証明書
現在事項証明書は全部事項証明書とは異なり、現在において効力のある登記事項だけが記載されています。
そのため、過去に差し押さえされた事項については記載されていません。
たとえば、お金を借り入れることを目的として金融機関への提出が必要な場合、全部事項証明書を用いると不利に働くケースがあります。
不利になる情報を隠したい場合は、現在事項証明書を用いるのも手段の1つです。
所有者証明書
所有者証明書は、不動産の所有者の名義や住所が記載されている書類です。
この書類が用いられるのは、新築や増築の建物表題登記申請のときです。
建物表題登記申請とは建物を建築したときに必要な手続きで、これまで無かった不動産を初めて登記するために作成されます。
所有者が1人ではなく複数の場合は、所有者証明書で持ち分に関する情報が得られます。
閉鎖事項証明書
建物の解体や土地の合筆といった手続きの際に、合筆された登記記録が閉鎖されることがあります。
このような閉鎖され、現在公開されていない情報を閲覧する際に取得するのが閉鎖事項証明書です。
この証明書には、すでに閉鎖されていて全部事項証明書に記載されていない登記事項が全て記載されています。
ただし、現在有効である不動産に関する過去の情報は全部事項証明書で証明できるため、閉鎖事項証明書が必要なのは特殊なケースだといえるでしょう。

閉鎖された登記簿は、オンラインで取得することができません(データ化されているものについては、登記情報提供サービスで閲覧することはできます)。
その不動産を管轄する法務局の窓口で請求するか、直接出向くことが難しい場合は郵送での請求になります。
登記事項証明書の種類に関わらず、不動産関係で登記事項証明書が必要なのは主に次のようなときです。
このように、不動産の売買だけでなく様々なシーンで登記事項証明書が必要となります。
登記事項証明書を取得する方法は3つ
不動産の売却などで登記事項証明書が必要な場合、次の3つの方法で取得できます。
受付時間や手数料などがそれぞれ異なるため、自分に合った方法で登記事項証明書を取得しましょう。
取得方法 | 申請から取得までの期間 | 手数料 |
---|---|---|
登記所や法務局証明サービスセンターの窓口で取得 | 10分~20分程度 | 600円 |
郵送で交付請求 | 1週間~10日程度 | 600円 |
オンラインで交付請求 | 待ち時間なし |
|
登記所や法務局証明サービスセンターで取得
登記事項証明書は、登記所や法務局証明サービスセンターの窓口で取得できます。
この場合は申請した当日に取得できるため、登記事項証明書の取得を急いでいる人におすすめです。
申請から取得までの所要時間は10分~20分程度で、手数料として600円の支払いが必要です。
受付時間は平日の午前8時30分~午後5時15分に限られているため、この間に東京法務局後見登録課、または全国の法務局・地方法務局の本局の戸籍課で手続きしましょう。
登記事項証明書を取得できる全国の法務局・地方法務局は、次の法務局のWebサイトで調べることができます。
郵送で交付請求をする
法務局や地方法務局までの距離が遠く、登記所や法務局証明サービスセンターで登記事項証明書の取得が難しい人もいるでしょう。
そのような場合、登記事項証明書を郵送でも取得することもできます。
郵送で交付請求する場合、東京法務局後見登録課のみで受け付けしています。
郵送での交付請求になるため、請求から取得までに1週間~10日程度かかります。手数料は、窓口での取得と同様に600円です。
法務局のWebサイトから「登記事項証明書申請用紙」を印刷し、切手を添付した返信用封筒を同封して送付します。返信用封筒には、返送先の明記を忘れないようにしましょう。
ただし、東京法務局後見登録課以外は郵送での交付請求は受け付けておらず、窓口申請になります。
オンラインで請求する
登記事項証明書は、オンライン請求でも取得できます。
オンライン請求の場合、他の方法よりも手数料が安く、待ち時間がないことがメリットです。
手数料は郵送の場合が500円、窓口交付の場合が480円となります。
登記所や法務局証明サービスセンターの窓口で登記事項証明書を取得する場合、平日の午前8時30分~午後5時15分に限られています。
しかし、オンライン請求の場合は平日の午前8時30分~午後9時まで手続きできるので便利です。
受付時間内にWebサイトにアクセスし、ブラウザ上で必要事項を入力して登記事項証明書を請求します。
支払いはネットバンキングで電子納付できる他に、Pay‐easy対応のATMも利用できます。

登記内容の照会が必要な場合は、「登記情報提供サービス」を利用して閲覧することもできます。
登記情報提供サービスとは、あらかじめ登録した法人や個人が、インターネットを使用してパソコンの画面上で登記情報を確認できる有料サービスです。
ただし、あくまでも情報の閲覧なので、登記事項証明書とは異なり証明文や公印等は付加されませんので注意しましょう。
登記事項証明書に関する問い合わせ先
登記事項証明書は手にする機会が少ないため、様々な疑問を抱く人もいるでしょう。
ここでは、登記事項証明書に関する問い合わせ方法を2種類紹介していきます。
方法 | 受付時間 | |
---|---|---|
電話 | 管轄の法務局に電話で問い合わせる |
|
メール |
|
メールなので24時間365日受付可能 |
管轄法務局に電話で問い合わせる
登記事項証明書に関する質問は、管轄の法務局に電話で問い合わせできます。
管轄の法務局は、法務局のWebサイトから調べられます。
ただし、受付時間は平日の午前8時30分~午後5時15分に限られているため、この時間内に連絡するようにしましょう。
たとえば、東京法務局の場合は次の電話番号に連絡すると対応してもらえます。
- 代表:03-5213-1234
- 地番の照会、証明書の発行関係:03-5213-1370
管轄法務局にメールで問い合わせる
登記事項証明書に関する質問は管轄の法務局に電話で問い合わせる以外に、メールで問い合わせるのも手段の1つです。
各法務局のWebサイトにはメールの問い合わせ専用ページが設けられています。
たとえば、さいたま地方法務局のメールの問い合わせ専用ページの場合、次のような事項を入力する必要があります。
- 氏名
- 年齢
- 性別
- メールアドレス
- 電話番号
- 問い合わせ内容のタイトル
- 問い合わせ内容
メールで問い合わせする際には、情報を保護するためにSSL技術が採用されているので安心です。
ただし、メールで問い合わせする場合には返信までに時間を要する可能性があります。
登記事項証明書は登記簿謄本データ化したもの
不動産の売買などに用いられる登記事項証明書は、従来の登記簿謄本をデータ化した書類のことです。
ほとんどの登記情報がデータ化されたのは2008年で、それからまだ10年程度しか経過していないため、登記簿謄本という呼ばれ方も残っています。
ここで、登記事項証明書の取得方法をもう一度確認しておきましょう。
このうち、最も手数料が安く時間がかからないのはオンラインでの交付請求です。
オンライン請求は平日の午後9時まで利用できるため、登記事項証明書が必要になった場合にはオンライン請求を利用すると便利です。

登記事項証明書は本人でなくても取得できますので、自分で取得することが難しい場合は、売買を依頼している不動産会社や手続きを依頼している司法書士などに頼むとよいでしょう。