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借地借家法は土地や建物を貸す人にとっても借りる人にとっても、非常に重要な法律です。
しかし、具体的に借りる側にとってどのような法律なのか理解しにくいかと思います。
ここでは借地借家法についての概要や、借りた場合に適用される内容、賃貸借契約を結ぶ際に注意したい点を解説します。
借地借家法の概要
借地借家法は、簡単にいうと建物や土地の所有権、それにまつわる貸主と借主の立場や権利を明確にすることを目的とした法律です。
地主と借主の立場の差を埋める法律
借地借家法は、1992年8月より施行された地主と借主双方の立場の差を埋めるための法律です。
それぞれの立場は、次のように捉えられています。
借主 | 何らかの理由で土地を借りる側、賃借人とも呼ばれる |
---|---|
地主 | 土地や建物の権利を持つ側、貸主とも呼ばれる |
民法では、誰もが対等な立場で自由に契約を結べるのが前提です。
しかし「持つ者」である地主の方が、「持たざる者」の借主よりも立場が強くなりがちです。そのため、弱い立場の「借主」を守るために借地借家法ができました。
ところが、旧借地法は借地人を守ろうとするあまり、地主には不利な内容だったのです。さらにバブル期に地代が跳ね上がったことで、地主の反発を招き改正されました。
ただし、新しい借地借家法を適用すると、旧借地借家法で契約している借主が不利になるため、1992年以前からの借地については旧借地権が適用されています。
借地権や建物の賃貸借契約に関する定め
借地借家法は1992年8月の借地借家法以前にあった、借地法と借家法を統合して制定されているため、その2つの法律の内容を含んでいます。
ただし、従来の法律と異なる3つの大きなポイントがあります。
- 事前に取り決めた期間内だけ土地を貸せる「定期借地権」が定められた
- 貸し出せる期間を地主と借主の合意の下で変更できるようになった
- 立ち退き要求ができる正当な理由があれば、地主側から借主に対し立ち退きを要求できる旨が明文化された
1992年8月の施行以前は、土地を借りる際に発生する借主の権利は、建物の構造によって契約期間が異なり、さらに更新に借主と地主が合意すれば半永久的に借りられるというものでした。しかし新法では、協議次第で、存続期間を短くあるいは長くすることができるようになりました。
また、土地の所有者である地主はそれまで「土地を返してもらいたい」と考えたとき、借主側の権利の方が有利なことも多く、貸したものを返してもらえない場合がありましたが、法改正により、立退料の支払いなどにより契約を更新せず、土地を手元に取り戻せるようになりました。
ただし、建物や契約によっては、借地借家法が定めるところに当てはまらない場合もあります。その場合は、民法が適用されます。
借地借家法における借地契約
借地契約とは、土地を借りる契約を結ぶことです。しかし借地契約を結ぶ際に、必ずしも借地借家法が適用されるわけではありません。
ここでは借地借家法が適用される場合の借地契約について、どのような決まりがあるかを解説します。
建物所有目的の賃貸契約に適用される
借地借家法は「建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権の存続期間、効力等並びに建物の賃貸借の契約の更新、効力等に関し特別の定めをするとともに、借地条件の変更等の裁判手続に関し必要な事項を定めるものとする。」と定められています。(借地借家法第1条)
つまり、借地借家法が適応されるのは「建物を建てて所有するために、土地を借りたい」という目的で、土地を借りる場合です。
たとえば、駐車場や資材置き場として土地を利用するために借りるのであれば、借地借家法は適用されません。そのような場合は民法に従うことになります。
借地権の種類と借地契約
借地権とは簡単にいえば、地代を支払うことで、地主から土地を借りてその上に自分が所有する建物を建設できる権利です。
土地を所有している場合の権利(所有権)と土地を借りる権利(借地権)とを比較すると次のような違いがあります。
- 所有者でなく地代を払うことから、土地に関する税金を支払わなくてよい
- 借地権の価格(値打ち)は、その土地の時価のおよそ6~8割
- 契約次第で半永久的に借りられる
さらに、借地権は次の2つに分かれます。
近年は、借地というと賃借権において貸し出される場合がほとんどです。賃借権は該当する内容によって、さらに種類が分かれます。
普通借地権
決まった期間が訪れるたびに、契約更新をするかを地主と借主の間で話し合い、合意できれば契約を更新することで土地を借り続けることができる権利です。
普通借地権の契約期間は一律30年とされており、契約内容によっては借地借家法3条の但書により30年以上と定めることができます。
その場合、最初の更新は契約から20年目となり、2回目以降の更新は、前回の更新から10年後、もしくは定めた期間に応じて更新されます。
定期借地権
定期借地権とは、最初に取り決めた期間内だけ土地を借りることができ、基本的に更新はありません。建設予定の建物などの条件によって、次のように分類されます。
契約の存続期間 | 特徴 | 更新 | |
---|---|---|---|
一般定期借地権(定期借地権) | 50年以上 | 借地借家法の契約更新や建物の再建による存続期間の更新に関する規定が適応されず、建物の買取請求権がない | 更新なし |
建物譲渡特約付借地権 | 30年以上 | 地主が建設された建物を相応の対価で買い取る契約 | 借地上の建物を地主に譲渡することで、更新なしとなる |
事業用借地権 | 10年以上50年未満(2008年1月1日の法改正以前は10年以上20年以下) | 店舗や商業施設を建設する目的の場合に結ばれる契約 | 基本は更新なし |
このうち、一般定期借地権と事業用借地権の場合、契約満了時に建物を解体して地主へ土地を返還する決まりがあります。
契約期間が満了したときは
普通借地権で取り決めた契約期間が満了した場合は「契約を更新する」か「契約を終了する」か、地主と借主が話し合ったうえで決定します。
なお、定期借地権は更新できません。契約を更新したい場合は再契約となります。
契約を更新したい場合
普通借地権において契約更新をする場合、その決め方によって3つの種類があります。
合意更新 | 地主と借主の合意の元、行われる更新 |
---|---|
自動更新 | 契約の取り決めの内容に応じた契約解除を行わない限り、地主と借主が合意したとして自動的に行われる更新 |
法定更新 | 契約満了の1年前から6か月前までの間に、更新拒絶の通知がなく、建物・土地の使用継続に地主が異議を述べない場合、同様の契約が自動的に更新 |
更新後の契約期間についても、借地借家法によって定められています。
ただし、最初に契約を結んだのが1992年7月31日以前であれば、こうした契約は旧法である借地法が当てはまります。
契約を終了したい場合
契約を終了したいときは、まず地主と借主ともに「相手に対して更新拒絶の通知を行う」必要があります。
しかし、たとえば地主が「更新したくない」と思っても、地主側に正当事由がなければ、借主はその土地を使い続けることができます。ここでいう正当事由とは、土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経緯、土地の利用状況、立退料の申出のことで、それらを考慮して判断されます。
借主は、更新をしたいと請求するか、土地の使用を継続すれば、一方的に借地契約を更新したとみなされるのです。
このように借地借家法は、土地を借りている借主に強い権利を与えています。
更新後に建物が滅失した場合は解約可能
地震などの自然災害や火災により、建物が滅失してしまう場合もあます。しかし建物が滅失しても、契約がなくなるわけではありません。そのため、建物の再建築が可能です。
通常、契約期間内は解約できませんが、契約更新後に建物が滅失した場合は、借主より解約を申し立てることができます。法的には申し立てから3ヶ月後に契約終了となります。
一方で、建物が一度滅失したが、再建築してそのまま土地を使いたい場合は、地主から許可を受ける必要があります。特に1992年8月1日以降に契約した場合は、無断で再建築すると地主側から契約の解約が可能です。
しかし、借地借家法における契約の初回更新の最低年数は30年のため、少なくとも2022年8月以降でなければ、この解約方法は使えません。
また、「両者解約申し入れを行わない」などといった規定を特約として定めておくこともできます。トラブル防止のためにもあらかじめ決めておくとよいです。
原則中途解約は不可です。特約があれば別ですが、借主側からのみ認められます。
地主が第三者に変わった場合
地主が親戚や不動産会社に土地を売った場合は、地主が変わります。地主が土地の売却をし、第三者が新たに所有者となること自体は法律上問題ありません。
しかし、その第三者が「売り渡されたから立ち退いて欲しい」と言ってきた場合、借主は所有する建物を自己名義で登記していれば、その要求を退けることができます。
つまり、地主が変わっても、土地を借りている権利(借地権)は保護されるのです。これは借地借家法10条において「第三者への対抗力」として認められた借主の権利です。
ただし、旧法において契約された古い借地権の場合、建物だけでなく借地権の登記も必要です。借地権を登記していないと、新しい地主の立ち退き要求に対抗することができません。
借地権の登記には地主の許可が必要です。立ち退き要求をされてから登記をしようとしても、間に合わないことになりますので注意しましょう。
契約後の地代の変更
契約を結んだあと、地主から「地代を増やしたい」あるいは「減らしたい」と要求がある場合があります。
土地の契約は長期にわたるため、その間に増税や周辺地域の地価が値上がりが起きることもあります。そこで地主には、公平性のために地代を変更できる権利が認められています。
このような場合、通常は地主と借主が話し合い、合意の元で賃料を合理的な水準に変更します。
しかし、借主側が地主からの賃料変更の申し出に合意しない場合、裁判所にて「調停」の申し出が行われることになることになります。
それでも合意できなければ、裁判所の判断により地代の扱いが決まります。
この決定が行われるまでの間は、借主はそれまでの額の地代を滞りなく納めることが大切です。
賃料(地代)を払わないと、借主としての責を果たしていないと見なされ契約違反による契約解除となり得るからです。
裁判の結果、賃料が変更となった場合は、記述されている通り賃料の清算が行われることになります。
借地借家法における借家契約
借地借家法において、家を借りる場合と土地を借りる場合では契約において当てはまるルールが異なります。
借家契約の種類
家や建物を借りる場合、その契約は内容に応じて次の2つに分かれます。
普通借家契約
契約期間は1年以上とし、上限はありません。つまり「期間に定めのない賃貸借契約」とみなされています。普通借家契約の場合は、契約期間が終わると更新をします。
契約を解除する場合は、借主からは3ヶ月前、地主からは6ヶ月前までに申し入れが必要です。
しかし、地主から契約解除の申し入れをする際は正当事由が必要であり、借地借家法第28条において正当事由として認められない場合は契約は終了しません。
よほどのことがないかぎり「正当な事由」として認められませんので、実際は、貸主(家主)からの解約申し入れはできない、ということになります(借地借家法における借主保護のため)。
定期借家契約
最初に決められた期間が満了した際に、契約が終了する借家契約です。普通借家契約と異なり、公正証書などにより定期借家契約であることを認めることが必要となります。
また地主側には借地借家法第38条により、契約終了の1年前から6ヶ月の間に地主側に期間の満了により賃貸借が終了する旨を通知しなければ、契約終了を借主に対し主張できないと定められています。
1年未満の契約、たとえば半年だけ借りる契約も定期借家として結ぶことができ、その場合期間に定めのない賃貸借契約とみなされることはありません。
定期借家契約は更新がないので、もし、最初に決めた期間を過ぎても、再契約をすれば継続して借りることができます。
不動産の賃貸借で注意しておくこと
不動産の賃貸借契約を結ぶ際、注意しておきたいポイントをまとめました。
借地借家法が適用されないケース
最初に述べたように、現行の借地借家法が施行されたのは1992年8月1日です。しかし、全ての契約において、この法律が強制的に適用されるわけではありません。
借地借家法が適用されるのは、1992年8月1日以降に契約した場合と、契約更新時に現行の借地借家法を適用することを地主と借主が合意した場合です。
旧法が適用されている場合
1992年8月以前に契約された物件では、旧法が適用されます。これは旧法で契約した借主に現行の法を適用することによって、借主が不利益を被る恐れがあるからです。
そのまま旧法で契約を継続することもできますが、更新時に新法である借地借家法を適用したい場合は、地主と借主が合意すれば新法への変更も認められます。
一時的に不動産を使用する場合
1992年8月以降に契約した場合でも「一時的な利用で建物を撤去することがわかっている」場合は、借地借家法は適用されません。
たとえば、選挙事務所やイベントのための駐車場、解体工事の資材置き場など、撤去する時期が決まっている場合などです。
使用貸借契約の場合
借地借家法は、建物や土地を借りる権利について適用される法律です。
そのため親族から賃料なしで不動産を借りている場合などは使用賃借と見なされ、借地借家法は適用されません。
契約満了後にすること
土地を返還するのであれば「更地」にする用意を、そのまま住み続けるのであれば「契約の結び直し」が必要です。
土地は更地にして返還する
基本的に、借主は土地を返還する際、自費で建設した建物を取り壊し、更地の状態にする必要があります。
しかし、定期借地権における建物譲渡特約付借地権の契約を結んでいる場合は、条件を満たせば地主に対し建物買取請求権を行使できます。
また旧法の借地権で契約であっても「更地にして返却する」という表記がない契約書の場合は、正当な理由を地主が示さない限り強制的に借主に解体を迫ることはできません。
そのまま住み続けたい場合
契約満了後、定期借家契約や定期借地契約を結んでいる人は、再度地主と借主で契約を結び直す必要があります。
居住中にトラブルを起こしている場合などは、地主からの信用が低くなってしまい、再契約に応じてもらえないこともあります。
普通借家や普通借地契約の場合は、大家側からの正当な理由がない限り、原則として借主が希望すれば契約更新が可能です。
中途解約時の違約金
一般的に契約期間の定めがない場合は、借主側の希望により契約を解除できます。
しかし、契約期間が定まっている場合、原則中途解約は認められません。しかし、中には中途解約権を認める特約が盛り込まれている契約もあります。
どうしても中途解約をしたい場合は、地主と貸主の間で「合意解約」を行います。話し合いで解決が難しい場合は「解約違約金」の支払いを行う場合もあります。
解約違約金は、契約内容に盛り込まれていることがほとんどです。また、地主(貸主)からの解約申し出は、よほどの理由がなければ認められません(借主を保護するため)。
トラブルに発展しそうであれば、違約金問題に詳しい弁護士などに相談しましょう。
トラブルの相手が不動産会社の場合、その不動産会社が加盟している団体(全日本不動産協会や全国宅地建物取引業協会連合会など)の相談窓口に問い合わせることもできます。
不動産貸借は契約前に仕組みをよく確認しておく
不動産の賃借は不動産購入より資金が少なくて済むという、大きなメリットがあります。出費を抑えたい場合や、一時的に土地や建物が必要な場合におすすめです。
しかし、契約前にどのような契約なのか、更新時はどうすればいいのかなど、仕組みをよく理解しておかないとトラブルの元になりかねません。
自分である程度仕組みを理解しておくことで、迷ったら専門家に相談するタイミングもわかりやすくなります。
長い目で見て有益な契約になるよう、慎重に検討していきましょう。