※当記事はアフィリエイト広告を含みます。
毎年、東京・銀座の土地の価格がニュースになりますが、その額は「地価公示価格」によるもので「公示価格」や「公示地価」とよばれています。
耳にしたことはあっても、その価格を出す目的や理由は気にしたことがない、という方も多いのではないでしょうか。
今回は、改めて「公示価格とは何か」を解説します。とくに、土地の売買を検討中の方にとっては「公示価格」の知識が役に立つので、ぜひチェックしてみてください。
公示価格に関する基礎知識
まずは公示価格がなぜ必要なのか、どのように決まるのかを解説します。これを把握しておくと、公示価格の活用シーンがイメージしやすくなります。
公示価格を設定している理由
公示価格は、国が算定した土地の価格の目安です。土地取引の多くが民間同士であるにも関わらず、なぜ国がわざわざ土地の価格を評価するのでしょうか。
その理由は、一般の土地の取引価格に指標を与えることと、公共事業における土地に対する適正な保証金の額を算出することにあります。
土地も売買が行われるという点では、食品や日用品と同じですが、品物とは違って複数の店舗で同じものが売られているわけではありません。
つまり、価格を比較できる対象がないということです。一般の人にとっては、その土地の適正価格がいくらなのか、わかりづらくなっています。
そこで、土地の適正な価格を判断するための目安として、客観的に評価した上で算出したのが公示価格です。この指標がないと、次のような事柄に関わる問題も発生します。
相続税・贈与税との関連
たとえば、市場相場で1,000万円の土地を所有する親が、子にその土地を譲るとします。1,000万円以下の場合、死後の相続なら相続税率が10%、生前の贈与なら贈与税が40%かかるのが通常です。
しかし、土地の価格設定が完全に自由だとすると、1,000万円の価値がある土地を、親が子へ1円で売ってもよいことになり、売買における取得では、相続税や贈与税を支払う必要がなくなってしまいます。
このような事態を避けるため、公示価格よりかけ離れた価格での取引は「みなし贈与」として贈与税の対象としています。
公共事業等の適正価格での取引
逆に、相場より高額すぎる価格を提示されることで生じる問題もあります。
公共事業で国や自治体がどうしても必要とする土地について、民間の所有者があまりにも高額な価格を提示した場合、その公共事業が頓挫(とんざ)することにもなりかねません。
土地の適正な価格を公に示すことで、民間・公共双方の土地取引を正常かつスムーズにしています。
公示価格の標準地の決め方
後述しますが、公示価格を決定するための調査には、時間・手間・費用がかかります。民間の調査ではなく国が主体の調査であり、費用の出所は税金です。
税金を過剰に投入するわけにもいかず、全ての地点において公示価格を出すことは現実的ではありません。そこで「標準地」と呼ばれる、その地域の平均になりそうな土地に限定して調査します。
標準地は、その土地の用途的地域(住宅・商業・工業等)と、地域特性に着目した同一状況地域の中で、各要因が最も標準的な土地が対象です。
また、標準地は国土交通省の審議会の一つである、土地鑑定委員会で決定されます。毎年決定されますが、ほとんど場所の変更がないため、土地価格の変動を比較可能です。
ここでいう要因とは、道路に面した分かりやすい土地、その地域の特徴を象徴する場所です。一言で言ってしまえば、最も普通の土地ですね。
公示価格の算出方法
公示価格は、不動産鑑定士による現地調査・最新の取引事例・収益性の見通し・調査地点間でのバランスなどを総合的に検討して算出します。
なお、算出する際は、その土地がどのような状況であろうと「更地」とするのがルールです。
たとえば、標準地になった土地に現在は廃屋(はいおく)が建っているとします。民間取引では、その廃屋を撤去しないと、買い手が撤去する分の費用を差し引いた額でなければ売れにくいでしょう。
しかし、標準地の公示価格は、他の土地とも比較できる同一条件で算出されるべきです。廃屋の撤去相当額を公示価格から差し引けば、他の地点との条件にバラつきが出てしまいます。
こうした理由から、あくまでも土地取引の指標となるべき公示価格は、全ての地点で「更地」と仮定して評価・算出されています。
公示価格の算出は国土交通省の土地鑑定委員会が行う
公示価格を最終的に算出・決定しているのは、国土交通省の土地鑑定委員会です。各土地の現地調査は不動産鑑定士が各地2人ずつで行います。
ただし、この不動産鑑定士の数は全国で約2,500人ほどで、全国各地をくまなく調査するのは不可能です。2019年の調査地点の数は26,000地点でした。
公示価格の発表時期
公示価格の発表時期は、毎年3月下旬です。調査の基準日は1月1日時点での価格を算出したものが公示されます。
そのため、基準日から発表までの期間で、実際の取引価格が大きく変動するような出来事があっても、公示される価格には反映されないことになります。
公示価格の調べ方について
続いて、公示価格の調べ方について紹介します。主に2つの方法があり、目的に応じて使いわけましょう。
国土交通省のWEBサイトを利用する
まず最初の手段は、国土交通省のWEBサイトを利用することです。
- 土地情報総合システムの「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」にアクセス
- 表示される日本地図の中から調べたい都道府県をクリック
- 各都道府県の地図から市区町村をクリック
- 検索画面に遷移(検索地域選択済)
- 検索条件で「地価公示のみ」を選択
- 調査年を選択(最新調査年のみにチェックすると自動選択)
- 住宅地・商業地などの用途区分を選択
- 地価の金額幅を入力(任意)
- 「検索」をクリック
- その地域の標準地番号順に検索結果が表示される
検索結果の画面では、所在及び地番・価格・交通施設、距離・地籍・形状・利用区分、構造が表示されています。その下にある「詳細を開く」をクリックすると、さらに細かな情報を閲覧可能です。
ただし、この方法だと市区町村の一覧が全て表示されてしまいます。調査したい土地がピンポイントな場合でも、一覧の中から住所が近そうなものを見て探すしかありません。
エリアを限定して探すなら「全国地価マップ」
市区町村でも範囲が広くて探しにくい、というときは、住所入力で検索できる「全国地価マップ」を活用しましょう。一般財団法人資産評価システム研究センターが提供しているWEBサイトのサービスです。
- 「全国地価マップ」にアクセス
- 「地価公示・地価調査」をクリック
- 注意事項に「同意」
- 郵便番号・住所から探すのボックスに入力して検索
- 検索結果の候補からエリアを選択
- 表示された地図の中で知りたい土地に近い場所の黒枠をクリック
- 画面左に「詳細情報」が表示される
たとえば、毎年最も高額を示して話題になる「銀座 山野楽器前」の土地は「東京都中央区銀座4丁目」にあります。この住所を入力して検索、地図を表示すると「中央5-22」の黒枠が表示されます。
役場や図書館で資料を閲覧
役場や図書館で、冊子または電子資料を閲覧するという方法もあります。内容別でまとまった冊子があるため、目的と合致するものがある人にはこちらの方が便利かもしれません。
次のような資料の種類があります。
資料名 | 詳細・内容 |
---|---|
地価公示 | 住宅新報社 年刊 |
地価公示 | 国土交通省土地鑑定委員会 年刊、大都市圏(東京・大阪・名古屋)の地域別対前年変動率 |
地価公示要覧 | 「北海道・東北・北陸・東海」「関東」「「近畿・中国・四国・九州」の3巻 |
官報 | 地価公示価格は号外で掲載 |
地価公示時系列データCD-ROM | 1970年〜最新年の情報を収録 |
2019年公示価格の動向
ここでは、2019年公示価格と前年以前とを比較した、土地価格変動の動向を見ておきましょう。
全国全用途平均は4年連続で上昇している
全国の全用途平均地価は4年連続で上昇しています。用途別で見ると、住宅地が2年連続、商業地が4年連続です。
とくに、三大都市圏(東京圏・大阪圏・名古屋圏)では住宅地・商業地ともに、2014年以降から上昇し続けています。
また、地方圏でも住宅地が1992年以来27年ぶりの上昇、商業地は2年連続で上昇です。地方4市(札幌・仙台・広島・福岡)ではその上昇基調は強く、その他の下落が続いていた地域も横ばいへと回復しました。
上昇し続けている要因としては需要が供給を上回っているからです。また、国としてもここ数年は金利を下げ、通貨を流通(円安)させ、銀行融資を促してきたからです。私見ですが今後は、大きく値下がりするのではないかと考えています。
全国的に住宅地の地価が回復している
2018年と2019年の公示価格を比較すると、住宅地における変動地プラスの都道府県の数は、14から18へと増加しました。その4都道府県は、北海道・石川県・山口県・佐賀県です。
また、もともとプラス傾向にあった県でも、その上昇幅が増加しているケースもあります。逆に、1%以上の下落率を示した県の数は10から7へ減少です。新潟県・鳥取県・島根県で1%未満まで下落幅が縮小しました。
全体的にみると、交通の利便性や住環境に優れた地域で、需要が上昇傾向です。
国土交通省の分析では、雇用・所得環境の改善と、低金利環境の継続、住宅支援施策等による、需要の下支え効果を背景としています。
公示価格の活用方法
公示価格を設定する理由でも一部触れましたが、改めてどのように活用されるのか、あるいは自分でも活用できるのかについて解説します。
自分の土地の価格を決めるときの参考にする
土地を売却するときは、ある程度自分で価格を決められます。しかし、相場よりもあまりに高額であれば売却することは難しく、逆に安すぎても「贈与」とみなされ、贈与税がかかるため注意が必要です。
そこで参考になるのが、公示価格です。公示価格は取引の適正な価格の目安になるものであり、実際に売買されるときの価格に近いため、この価格から大きく離れていなければ、スムーズに売買しやすくなります。
とはいえ、公示価格はあくまでも目安にすぎず、極端な差額でなければ価格設定は自由です。売り出しにかけられる時間も含めて価格を設定しましょう。
不動産会社の見積を確認するときの参考に
最終的な売買価格は、売り手と買い手の合意によって決定します。しかし、買い手を募集するための売り出し期間は、価格を設定して広告を出すことになります。
売主が自ら広告掲載することはほとんどなく、一般的には不動産会社に仲介を依頼します。依頼する不動産会社は、できるだけ高く売ってくれそうなところを選ぶのがベストです。
その判断の基準になるものの一つに、不動産会社が提示する見積書が挙げられます。不動産会社がその土地を評価した金額が記載されているのですが、この価格が適正かどうかを判断するときに公示価格が使えます。
公示価格の地点より駅から近ければ高く、下水道が完備されていないので安く、といったように標準地を基準として金額が妥当かどうかを判断してみましょう。
不動産鑑定などの資産の時価評価
売買の仲介を依頼された不動産会社も、公示価格を参考にして見積を算出しています。しかし、不動産鑑定が必要となるのは売買に限りません。金融機関の担保評価や、相続税・固定資産税でも鑑定が必要です。
これらのいずれの鑑定も、公的な土地価格の指標として1年で最も早く発表される公示価格が参考にされる傾向にあります。とくに、相続税・固定資産税の計算に使われる「路線価」は公示価格と深く関連しています。
路線価はその名の通り、道路に面した土地の価格ですが、相続税路線価は公示価格の8割、固定資産税路線価は公示価格の7割が目安です。
公共事業で土地を買い取るときの指標
公共事業で国や自治体が民間の所有者から土地を取得する場合、一般的な言い方をすれば「買い取る」になりますが、専門的には「用地補償」といいます。
用地補償の場合、土地の補償額算定の基本原則に従って、周辺の取引事例や公示価格を参考に算出します。「土地の補償額算定の基本原則」は次の通りです。
- 正常な取引価格
- 建物等の物件がないものとしての取引価格
- 事業の影響がないものとしての取引価格
1番目は、「客観的交換価値」を基礎としたもので、主観的な感情価値や特別の用途に用いる価値を考慮しないことを示しています。
2番目は、公共事業の場合は土地のみを取得するため、既存の建物については評価せず、更地として評価するということです。ただし、建物等の物件の移転料は補償します。
3番目は、火葬場や下水処理場といった土地の価格を低下させやすい公共事業で土地を取得するとき、その施設が建つことで低下する土地価格ではなく、影響がないものとして評価するということです。
公示価格に関する注意点
公示価格を調べる前に、活用する際の注意点を見ておきましょう。
地方の価格は取引の参考にならない
価格を知りたい土地の近くに公示価格が出ていると便利ですが、その数は26,000件と、あまり多くありません。公示価格を算出する標準地の数は、都市計画法で対象とされた「都市計画区域内」を主としています。
そのため、地方の都市部ではないエリアでは、公示価格が示されておらず、参考にしにくいというわけです。公示価格を補完するものとして、各都道府県が算出する「基準地価」も確認しましょう。
それでも、地方の場合は取引事例が少ない傾向があり、需要の中心価格を割り出すことは難しいかもしれません。
公示価格は都心部の方が多いのが現状です。なぜなら、少し移動するだけで、土地の価値が一気に変わるからです。
例えば、銀座と築地は近いですが、ご存じのとおりその用途・価値は全く違います。地方、例えば北海道を例に挙げますと何キロ進んでも草原っていうところありますよね。でもほとんど価値は変わりません。そういう感じで、一般的には都会の方が密集して標準地があります。
調べたい土地の近くにあるとは限らない
地方に限らず、都市部でも参考になりそうな公示価格が近隣では出ていないこともあります。参考になりそうな公示価格がなければ、公示価格よりも広い地点で価格が出る「相続税路線価」を調べましょう。
相続税路線価は公道に面している土地に対して行われる評価額で、先述の通り、公示価格の約8割の額です。つまり、1.2倍すれば公示価格に近しい金額がわかります。
相続路線価は、管轄が税務署です。最寄りの税務署・国税庁にて調べることができます。
時価とかけ離れている場合もある
公示価格は、毎年1月1日時点での土地の評価額であり、発表は3月になるためタイムラグがあります。この期間で土地の価格を左右する出来事があれば、発表時点の公示価格と時価がかけ離れることもあるでしょう。
あるいは、公示価格はあくまでも標準的な土地で行われるため、道路との接面が少ない旗竿地や、区分が歪な形状になっている不整形地、勾配のある土地の時価の参考にはなりません。
また、分譲マンション用地は分譲価格を参考にしたり、高度商業用地はDCF法という収益性を見る方法で土地を評価するため、公示価格と実際の売買価格とは大きく異なります。
近隣の標準地と調べたい土地の条件に大きな違いがみられるときは、専門家に鑑定を依頼した方が良いでしょう。
土地の売却を検討している方であれば、下記の不動産一括査定を利用した方が、正確な売却価格を知ることができます。
このような場合は鑑定士に個別で依頼することになります。費用は20万円〜40万円程度。大きく、高くなればもっと高いそうです。日数としては1カ月前後、大きなものだと3カ月かかることもあるそうです。
HOME4U
出典:HOME4U
HOME4Uは、NTTの関連会社である株式会社NTTデータスマートソーシングが運営する老舗不動産売却査定サービスです。
全国の実績がある1800社の不動産会社と提携しているため、最大6社一括査定でき、より実際の価格相場を知ることができます。
リビンマッチ
出典:リビンマッチ
リビンマッチは、全国1700社の不動産会社と提携者数し、様々なエリアと土地種類を対応できる不動産会社が見つかりやすいです。
また、オンラインチャットで簡単査定できるので、隙間の時間ですぐ一括査定依頼できます。
公示価格は資産価値や実勢価の目安
公示価格は、取引の適正な価格の目安になるものです。ただし、あくまでも目安でしかなく、その金額と一致させる義務はありません。
とはいえ、土地の事情があまりわからないときには、かなり役に立ちます。数年の価格変動をチェックし、上昇傾向か下落傾向化がわかれば、その要因を探りやすくなるからです。
また、売却を考えている土地であれば、不動産会社の見積書を確認するときに、公示価格を参考にできます。あまりにも高い・安い金額が提示されたときは、その理由を聞いてみましょう。
明確な答えが出てこなければ、他社にも見積を依頼するなど、とれる手段の幅が広がります。目的に応じて、公示価格を活用してみてください。
2020年に開催される国際競技大会や、問題になっている「人口減少」「2022年問題」など、不動産業界に与える影響は実際どれくらいのものなのでしょうか。不動産の今後の動向や気になる不動産価格の変動予想など、多角的な視点から紹介します。