
家を相続する予定がある方は、まず手続きの流れを確認するとよいでしょう。
また、相続する財産が家の場合、全相続人で平等に分割することが難しいです。
そのため、遺産分割協議のことや、遺産分割の方法も把握しておきましょう。
他にも家を相続すると発生する可能性がある税金についても解説しています。
どのような場合に税金が発生するのかを知っておくことで、税金の支払いを抑えられるかもしれません。
手続きについて不明なことがあるときや相続の際にトラブルが起こったときには、専門家に相談しましょう。
家を相続したときの手続きの流れ
はじめに家を相続したときの手続きの流れを確認しておきましょう。以下のような流れで手続きを進めていきます。
相続の可能性がある場合、事前に不動産の価値を調べることが大切です。
また、遺言書がある場合とない場合とで手続きが異なります。
そのため、相続することになった場合、遺言書があるかどうかも調べましょう。
それでは一つずつ解説していきます。
不動産の価値の確認をしておく
相続の手続きは約10ヶ月ほどの長い期間を要するため、少しでもスムーズに手続きを進めるために、不動産の価値を知っておくとよいです。
相続の予定があるのであれば、事前に査定サービスなどを利用して価値を把握しておきましょう。
不動産は価値がわかりにくいので、手続きの際に揉めるポイントになりやすいです。
事前にしっかり価値を把握しておくことで、協議に時間がかかったり騙されたりするトラブルを防ぐことができます。
相続の予定がまだ先でも、早いうちに価値を調べておいて損はありません。
相続が前倒しになるなど、予測していないことが急に起こることも考えられます。
無料で簡単に価値を見積もることができる一括査定サービスを利用すれば、インターネットから簡単に調べることができるので、今のうちに不動産の価値を把握しておきましょう。

相続税計算は公の基準額を元に計算されます。売る場合は市場の売買価格で売却することになります。
遺言書の確認
遺言書の有無を確認し、遺言書があれば遺言書に従った相続を進めていきます。
遺言に従って不動産の相続登記を行う場合、遺言による相続人が法務局に登記申請を行います。申請期間の制限はありません。
遺言に従った相続の場合、遺産分割や法定相続登記とは手続きが異なります。
遺言書がある場合
遺言書がある場合は、被相続人の戸籍謄本は不要です。
遺言が自筆証書で作成された場合は、家庭裁判所の検認手続きが必要になるなど、手間と時間がかかってしまいます。公正証書で作成された場合は、すぐに相続登記ができるので手続きは楽です。
遺言による相続登記では、戸籍(除籍)謄本、被相続人の住民票の除票、受遺者の住民票、相続する不動産の遺言書などが必要となります。
相続登記の必要書類の詳細は、後述している内容を参考にしてください。
遺言書がない場合
遺言書がない場合は、民法に定められた法定相続人を決めます。
民法第900条によると、法定相続人は配偶者と子、いない場合は直系尊属となる親や祖父母、またいない場合は被相続人の兄弟姉妹が相続人という優先順位です。
あくまでも相続人の優先順位であり、遺産の割合ではないことに注意しましょう。
例えば配偶者や子がいる場合は、親や祖父母または兄弟姉妹は法定相続人にはならず、遺産は相続できません。
家族関係を明らかにして法定相続人を確定するためには、被相続人の戸籍を確認する必要があります。
そして法定相続人が確定したら、相続人全員の戸籍謄本を取得しましょう。
遺産分割協議をする
遺言書がない場合に行う必要があるのが、遺産分割協議です。相続人全員で遺産分割の話し合いをして、相続内容を決定します。開始時期は制限がなく自由です。
もし遺産分割の話し合いがうまくいかず答えが出なかった場合、家庭裁判所の遺産分割調停へと進める必要があります。
家庭裁判所でも解決しなかった場合、審判により遺産を分割しなければなりません。
このように、遺産分割協議の話し合いが難航すると、手間も時間もかかってしまいます。
スムーズに進めるために、遺産協議で話し合うべきことを事前に確認しておきましょう。

相続人全員というのは民法の規定により異なります。
配偶者や子供のうち誰が存命か、亡くなっているか、で、1人の場合もあれば100人の場合もあります。
遺産分割協議で話し合うべきこと
基本的に、相続人の確定、相続する意思の有無、相続財産の内容、分割方法、遺言書の有無などを話し合いますが、遺産分割協議で話し合う内容は自由です。
そのため、不満がある相続人が1人でもいると揉めることがあります。
遺産分割の際に揉める原因になりやすいのは、分配方法です。
法定相続の基準通りに分割できるものは問題ありませんが、相続分通りでは分割が難しいものに関して話し合いをする必要があります。
また、生前に被相続人から援助を受けていた場合や被相続人に援助をしていた場合などの状況を考慮して、柔軟に話し合いを進めることも大切です。
相続登記をする
相続登記とは、不動産の所有者の名義変更の手続きのことです。
不動産の所有者は法務局で登録されているため、相続登記は必要な手続きとなります。
義務ではありませんが、手続きをしないと不動産を売却したり、担保にしたりすることができません。
相続の際のトラブルの原因にもなるため、必ず手続きを行いましょう。
相続登記に期限は設定されていないですが、トラブルを避けるために、なるべく早く行うことをおすすめします。
相続登記の方法
法務局の不動産登記係という窓口へ書類一式と申請書に押印した印鑑を持参し、手続きをします。
約10日後に登記が完了するので再度法務局へ行き、書類を受け取ったら完了です。
また、直接法務局へ行かず、郵送やオンラインでも相続登記をすることができます。
法務局の窓口、郵送、オンラインの3つの申請方法がありますが、手続きに不安があり相談しながら行いたい場合は、法務局の窓口で行うと安心です。
ただし、法務局に行く手間と時間がかかるため、どうしても行く時間が取れない方は、郵送かオンラインで行うしかありません。
郵送の場合、普通郵便ではなく書留郵便で送ります。
書類の不備があった場合、窓口とは違いその場で対応できず、やりとりに時間がかかってしまうため、事前に法務局に問い合わせるなどして、よく確認してから手続きをしましょう。
オンラインの場合は、パソコンの設定や電子証明書の取得の手間がかかりますが、パソコンの操作が得意な方であれば自宅で手続きができる点はメリットです。
オンラインで申請を検討している方は、法務省のホームページで詳細が確認できます。
相続登記の費用と必要書類
相続登記の費用は、登録免許税と提出書類取得の費用が必要です。
登録免許税は、固定資産税評価額の0.4%となっています。
例えば、1,000万円の家を相続登記する場合、登録免許税の金額は40,000円です。
また、登記簿謄本、戸籍謄本や住民票などの証明書類が必要で、それに伴い数千円の費用がかかります。必要書類の詳細は以下の通りです。
必要書類 | 取得場所 |
---|---|
登記簿謄本 | 法務局 |
被相続人の住民票の除票 | 故人の最終住所の市区町村役場 |
被相続人の出生から死亡時までの戸籍謄本 | 該当地の市区町村役場 |
相続人全員の戸籍謄本や住民票、印鑑証明書 | 該当地の市区町村役場 |
不動産の固定資産評価証明書 | 不動産がある市区町村役場 |
遺言書 | 公正証書の場合は公証役場、自筆証書の場合は不明(自宅、銀行、友人宅、専門家など) |
遺産分割協議書 | 遺産分割協議の後に作成 |
場合により、上記以外の書類が必要になることもあります。
家などの不動産を分割相続する方法
家などの不動産は、分割することが難しいです。
そのため遺産分割協議でも揉める原因になりやすいのですが、以下のような方法で分割することができます。
- 現物分割
- 代償分割
- 換価分割
それぞれの方法の特徴、メリット・デメリットを確認し、どのように分割するとよいかを考えておきましょう。
財産をそのままの形で相続する現物分割
現物分割とは、1つ1つの財産に対して相続人を決める方法です。
例えば、長男は不動産(家や土地など)を相続し、長女は預金を相続するなどのようにします。
不動産の価値と貯金が同じくらいであれば、現物分割はよい解決法となるでしょう。
不動産が複数ある場合、1つ1つの不動産を現物分割することもあります。
現物分割のメリットは、全相続人が納得したうえで行った場合、金銭を分割するよりも揉める可能性が低いことです。
デメリットは、例えば不動産と預金とで現物分割する場合、全く同じ価値になる可能性は低く、平等な分割が難しいことです。
また、預金がなく財産が家のみだった場合、物理的に現物分割することは難しいこともデメリットとなるでしょう。
金額的に平等になる代償分割
代償分割とは、分割できない財産を相続した人が、他の相続人にその財産に見合った現金を渡す方法です。
例えば、相続した財産が600万円相当になる土地や家だけの場合で、相続人となる子供が3人いたとします。
長男が土地と家を相続し、長男は次男と三男に200万円ずつ渡すなどの方法です。
このように、財産が土地や家だけの場合に、この方法を取り入れることがあります。
メリットは、不動産と金銭との分割となっても、平等に分割できることです。また、家も売らずに済みます。
デメリットは、財産となる不動産を相続した人は、まとまった資金が必要となることです。
不動産の査定価格を出した際には、査定価格に納得がいかずに揉める可能性も考えられるでしょう。
換金してから相続する換価分割
分割が難しい財産を売却し、換金した分を相続人に分配する方法です。
換金してからの分配なので、確実に平等に分けることができます。
例えば、相続した土地と家を600万円で売却して、3人の相続人で分割する場合、1人200万円ずつ平等に分けることが可能です。
このように、間違いなく平等に分けられることは大きなメリットだといえるでしょう。
デメリットは、売却金額が希望通りの金額にならないケースもあることです。
また、財産となる不動産を売却してしまうため、家や土地を手放さなくてはなりません。
相続した不動産にかかる税金について
不動産を相続すると、税金の支払いが発生することがあります。以下は、発生する可能性がある税金です。
上記の税金は必ずかかるというものではありません。どのような場合にこれらの税金が発生するのかを確認しましょう。
相続税がかかる場合がある
相続税は、被相続人の相続財産のすべての合計額が基礎控除額を超えた場合のみにかかる税金です。全体の5%程度の人に該当します。
相続税には基礎控除があるため、ほとんどの人は支払う必要はありません。
基礎控除の金額は、「3,000万円+600万円×相続人の人数」です。
例えば相続人が3人だった場合、「3,000万円+600万円×3=4,800万円」となるため、4,800万円以下であれば相続税がかからないことになります。
相続人が1人だったとしても、相続財産が3,600万円を超えない限り、相続税を支払う必要はありません。
よほど高額な相続でない限り、相続税は発生しないでしょう。
翌年からは固定資産税が発生する
相続によって不動産を取得した場合は、翌年から固定資産税が発生します。
固定資産税とは、不動産を所有していると発生する税金です。
毎年1月1日時点の不動産の所有者に対して、その年の1年分の固定資産税の支払いが義務付けられています。
相続した財産が現金だった場合、もしくは相続した不動産をすぐに売却して手放した場合は、固定資産税は発生しません。
なお、1月1日から故人が亡くなった日までの所得税を申告することを「準確定申告」といいます。
この準確定申告では、亡くなったときまでに固定資産税の納税通知書が届いていた場合、全額を必要経費とすることが可能です。
亡くなったときまでに納税通知書が届いていない場合は、必要経費にはできません。

準確定申告の手続きは少々複雑な面があります。固定資産税や準確定申告のことで不明なことがある場合は、税理士などの専門家に相談しましょう。
不動産取得税がかかる場合がある
不動産取得税とは、不動産を取得した場合に発生する税金です。
ただし、通常、相続により取得した不動産に対しては、不動産取得税は発生しません。
なぜなら、不動産取得税は生きている人から不動産を取得した場合にかかる税金だからです。
亡くなった人から不動産を取得する相続の場合には当てはまりません。
しかし例外として、遺言書によって相続人以外が不動産を取得した場合には不動産取得税がかかります。
不動産取得税が発生した場合、固定資産税評価額の3%の支払いが必要です。
売却すると所得固定資産税評価額 × 4%税が発生する
相続した不動産を売却した際は譲渡所得との判断を受け、所得税が発生します。
不動産を所有していた期間により所得税の税率が異なりますが、所有年数が5年を超える場合の税率は、所得税15.315%、住民税5%です。(所得税率は、2037年まで支払いが必要な復興特別所得税の2.1%分も含んでいます。)
ただし、所得税の支払いが発生しない、または支払額を抑えられる可能性もあります。
その理由は、相続した不動産の売却を対象にした特例により、税制上の優遇措置を受けられることがあるためです。
節税のためにも、不動産を売却する際には、税務署や税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。
なお、不動産の売却は、希望通りの金額で売れなかったり、他にも様々な経費や税金が発生したりするため、よく検討する必要があります。
まずは一括査定などで不動産の価値を把握し、高く売れそうだと判断した場合に売却するのがおすすめです。
家の相続の際にトラブルが起きたときの相談先
家の相続がうまくいかずトラブルが起こった場合、または相続の手続きに不安がある場合は、専門家に相談しましょう。専門家とは、以下のような人のことです。
- 弁護士
- 税理士
- 司法書士
相談したい内容によって、相談先を変えるとよいでしょう。それぞれの専門家についてと相談できる内容について解説します。
相続のトラブルは弁護士
遺産分割の割合で揉めている場合、誰が土地と不動産を相続するのか決められない場合などは裁判問題に発展することもあるため、弁護士に相談するのがよいでしょう。弁護士に相談できることは、次のようにいろいろあります。
- 遺産分割の割合や分け方のアドバイス
- 法定相続分の取り合いによるトラブルの相談
- 相続財産や相続人の調査
- 相続人同士の交渉を弁護士に依頼できる
- 遺留分を侵害され、遺産を取り戻したい場合の相談
- 内縁者の存在が発覚した場合の相談 など
弁護士に相談する費用は、事務所により異なります。無料相談に対応しているところもあるため、その際に大体の費用を確認するのもよいでしょう。
相続税の相談は税理士
相続税の申告や相続財産の評価などの税金に関することは税理士に相談するとよいでしょう。
税理士には、以下のような内容を相談できます。
- 相続税の申告や基礎控除額について
- 相続でかかる税金についての相談
- 相続財産の評価について
- 準確定申告・確定申告について など
税理士に相談する費用は、税理士事務所によって異なります。
税理士事務所のホームページで確認したり、事前に電話やメールなどで問い合わせたりして、費用を確認してから相談しましょう。
相続登記の相談は司法書士
相続登記や銀行や証券などの財産の継承手続きの相談は、司法書士に相談するとよいでしょう。
司法書士に相談できる内容は以下の通りです。
- 相続登記の手続き
- 相続放棄の手続き
- 抵当権抹消登記
- 銀行や証券など、各種財産を承継する手続き
- 遺言の検認や執行など
司法書士事務所により、対応できる内容が異なります。
例えば相続登記専門の司法書士事務所に依頼した場合、銀行や証券などの各種財産を承継する手続きは自分で行わなくてはなりません。
依頼する費用の確認も必要ですが、対応している内容もよく確認してから依頼しましょう。
家の相続には事前の準備をしておこう
遺言書があるかないかで、相続の内容がガラリと変わることがあります。
そのため、まずは遺言書の有無を確認することから始めましょう。
遺言書がない場合は、遺産分割協議を行う必要があります。家を相続する場合は、遺産分割が物理的に難しいため、複雑です。
遺産分割協議がスムーズにいくように、事前に話し合うべき内容や分割方法の種類についての知識を深めておきましょう。
どうしても話し合いが上手くいかない場合や、相続でトラブルが起こった場合は、専門家に相談することをおすすめします。
相続に関するトラブル全般は弁護士へ、税金の相談は税理士へ、相続登記の相談は司法書士に依頼しましょう。
専門家に相談することになった場合は、依頼費用が発生します。
事前に費用や各事務所の対応範囲を確認してから依頼することも大切です。