
土地の購入を検討している人にとって、価格はじっくり検討したい要素の1つです。
しかし、土地の価格について調べようと思っても、公示地価や実勢価格など複数の価格が出てきて戸惑ってしまうことがあります。
土地には目的や評価基準に応じて様々な価格がつけられます。
ここでは、公示地価とはどのように決められるのか、実勢価格や路線価とは何が違うのか、調べたい時はどうすればよいのかを解説します。
公示地価とは何か
まず、公示地価について、基本的な内容を解説します。
国土交通省が発表する土地の価格
公示地価は、地価公示法に基づき国土交通省の土地鑑定委員会が公示する、ある特定の土地の1平方メートルあたりの価格のことです。
その土地の持つ価値を客観的に評価して取引の参考にし、経済への悪影響を未然に防ぐ目的があります。
またその公平性から、自治体が公共用地を取得する際の価格の算定や税金を算出する際の基準ともなります。
公示価格が公表される時期
公示価格とは国土交通省が公表する公示地価と、都道府県が公表する基準地価を合わせた呼び名です。
公示地価は毎年1月1日の時点における価格を鑑定し、同年3月中旬ごろに公表されます。
毎年7月1日時点を基準とし、9月中旬に都道府県が発表する基準地価や、毎年1月1日時点を基準とし、7月に国税庁が発表する路線価より時期が早く、それぞれの基準となります。
公示地価の決められ方
公示地価が実際にどのように決定されるのかを紹介します。
全国にある標準地が対象となる
標準地とは、国土交通省の土地鑑定員会が地価公示法に基づき定めた土地を指します。
標準地は全国各地におよそ26,000ヶ所存在し、毎年、標準地として適切かどうかが判断されたうえで、公示地価が鑑定されます。
標準地は都市計画法が定める都市計画区域内から選ばれますが、都市部の土地ならどこでもよいわけではなく「この土地の価格なら他の土地が参考にしやすい」と判断できる要素を持っている土地が選ばれます。
毎年、標準地は評価し直され、適さないと判断されれば前年は標準地であっても除外されます。
これは高すぎる土地、あるいは安すぎる土地の価格を公示地価にしても、参考にならないからです。

この標準地は公示地価が発表される際に、住所もあわせて公表されます。
不動産鑑定士の鑑定により決定
公示地価の決定に携わるのが、不動産の適切な価値を評価できる不動産鑑定士です。
不動産鑑定士2名以上が1つの標準地に対し評価を行い、その結果を土地鑑定委員会が審査し、最終的に決定されます。
土地の鑑定方法
不動産鑑定士は「取引事例比較法」「収益還元法」「原価法」の3つの方法で価格を決定し、他のさまざまな要因を加味した上で適切な価格を算出します。
国土交通省の「地価公示制度の概要」によると、「取引事例比較法」「収益還元法」「原価法」とは、次のような方法です。
取引事例比較法 | 実際の取引を複数集めて比較して算出する方法 |
---|---|
収益還元法 | 将来的に生み出すと考えられる純利益の総和を求める方法 |
原価法 | もし同じ不動産を現時点で同じように取得しようとしたらいくらかかるのか調べる方法 |
公示地価の活用
公示地価の活用には、次のような活用があげられます
このように、公示地価は地価(土地の価格)を正常に保ち、税金を適切に決定するために活用されています。
また、あくまでも目安ですが、実際にその地域の土地を購入したい人にとっては、公示地価は有益な情報の1つといえます。
土地の取引時の参考にされるほか、公共事業用地の取得価格算定の規準となったり、土地の相続評価および固定資産税評価についての基準となったりします。
毎年発表されるため、土地価格の変動を知ることができます。
公示地価とその他の公的な地価(土地の価格)
土地の価格は「一物四価」とも言われ、1つの土地に対し4つの価格があると言われています。
それぞれどのような違いがあり、何のために評価が行われるのかを解説します。
土地の価格は4種類ある
土地の価格は評価する目的や基準により、4つにわかれます。
土地の価格 | 目的 | 特徴 |
---|---|---|
公示地価 | 不動産取引の指標、公共事業の取引の指標 | 国土交通省土地鑑定委員会が鑑定、全国およそ26,000地点で実施 |
基準地価 | 不動産取引の指標、公共事業の取引の指標 | 都道府県が鑑定、全国およそ21,000地点で実施 |
路線価 | 相続税・贈与税の評価 | 全国各地の路線価地区 |
実勢価格 | 実際の売買額 | 売買の対象となる土地全て |
このうち、公示地価・基準地価・路線価は国の公的な機関が公表する価格です。
基準地価とは
基準地価は都道府県が発表する価格であり、公示地価と目的はほぼ同じですが、次の3点が異なります。
基準地価は、標準地とほぼ同様に選びだされる基準地が対象です。
公示地価よりも評価する土地を選ぶ決まりが少ないため、公示地価では評価されない地域をカバーする目的もあります。
ただし、全く重複しないわけではなく、地価変動が経済に影響を及ぼす可能性が高い土地は基準地と標準地双方に指定されている場合もあります。
路線価とは
路線価は、路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額のことであり、路線価が定められている地域の土地等を評価する場合に用います。
相続税や贈与税といった税金を計算するために鑑定されることから、次の2種類があります。
相続税路線価は、国税庁が相続税を算出する際、その基準となる土地の価格です。税金を支払う側も、確認する税務署側でも、算定がスムーズに行われるように広く公表されます。
毎年1月1日時点での価格が、同年7月ごろに公表されます。公示価格の標準地以外の地点も対象です。
収入減少や地価の下落などマイナスな要素が起きても相続税を払いやすくするために、公示地価に対し8割程度に設定されています。
固定資産税路線価は、主要な宅地の価格をふまえ、市町村によって路線価が取り決められています。適切な価格に変更するための見直しが3年に1回行われることから、公表は3年に1回です。
相続税路線価と同様に、地価の下落などマイナスな要素が起きた場合に備え、こちらは公示地価の7割程度を目安に定められます。
実勢価格とは
実際に不動産市場で取引されている価格を、実勢価格といいます。
不動産の価格は流動的であり、売主と買主の意向だけでなく社会情勢などにも影響を受けるため常に一定ではありません。
そのため、必ずしも公示地価や路線価と一致するとは限らず、また同じ地域内でも価格帯に大きな幅が現れるのが特徴です。
実勢価格の成約例を調べたい時は、国土交通省がアンケート調査によって提供している「不動産取引価格情報検索」がおすすめです。

不動産売却では、なるべくたくさんの情報を集めて精査しますので、どの価格についても、ある程度知っておくほうがよいでしょう。
公示地価の調べ方
公示地価を調べる方法には、「インターネット上の公示地価の情報を提供しているサイトで調べる」もしくは「冊子や電子資料より調べる」という2通りがあります。
国土交通省の土地総合情報システム
調べたい土地の住所が詳しくわかっている時は、国土交通省の土地総合情報システムから閲覧できる「地価公示都道府県地価調査」がおすすめです。
閲覧自体に費用は発生せず、自由に全国各地の価格をチェックできます。
また、地価公示の詳細情報として土地の形状や面積、利用方法、前年度との比較などが記載された「鑑定評価書」を合わせて閲覧できるため、実際の不動産取引に備えた情報収集にも役立ちます。
土地情報提供サイト
調べたい条件が住所以外で複数ある方や、固定資産税評価額なども合わせて調べたい時は、土地情報提供サイトがおすすめです。
特徴 | 調べられる内容 | サイト | |
---|---|---|---|
全国地価マップ | 最新4年分の地価情報を地図上から調べられる | 固定資産税路線価、地価公示価格、相続税路線価等、都道府県地価調査価格 | https://www.chikamap.jp/chikamap/Portal?mid=216 |
土地情報提供サービス | 知りたいことに合わせた情報提供メニューがある | 個別地点情報、地域ごとの平均価格や前年度からの変動、該当する制度 | https://www.lic.or.jp/landinfo/ |
あなたの街の地価ランキング・地価マップ | ランキング形式で地価が調べられる | 地価公示と地価調査の同一地点表、地価の推移・比較 | http://www.tikara.jp/rank/ranking_map.cgi |
冊子や電子の資料
1900年代の古い公示地価を調べたい場合や、冊子で調べたい場合には、住宅新報社や国土交通省土地鑑定委員会が発行している「地価公示」が利用できます。
またデータをダウンロードして利用したい場合は、国土数値情報ダウンロードサービスや、国土交通省の発表資料を検索することでエクセル形式やテキスト形式でダウンロードできます。
公示地価を参照する際の注意点
土地価格の相場を調べる際には、国が示す公示地価や都道府県が示す基準地価を情報の1つとして扱い、他のデータと合わせて検討することをおすすめします。その理由は、以下の通りです。
調査対象の土地が限られている
公示地価が算出される標準地は、全国で約26,000ヶ所です。
しかし、総務省の「平成30年度 固定資産の価格等の概要調書」によると日本全国の宅地の数は83,715,197筆(1個の土地を表す単位)とあります。もちろん都市部だけでなく、山間部や郊外にも宅地があります。
また国土交通省の「平成30年度 土地に関する動向」によれば、平成30年の全国の土地取引件数は131 万件です。
同じ土地が何度も売買されている可能性もありますが、標準地の数に対し、宅地や土地取引の件数の方がはるかに多いことがわかります。
そのため地域によっては、公示地価を調べようとしても標準地が近くにない場合があります。参考となる情報を増やすためにも、補完として都道府県が発表する基準地価も調べておくのがおすすめです。
それでも近隣の情報がない場合には、実勢価格や不動産会社による査定を受けるという方法も検討してみましょう。

基本的な話でいうと、都心よりも地方になるにつれて標準地が少ないのが現状です。
実際に取引される価格とは異なる
公平性の高い公示価格ですが、必ずしもその通りの価格で売買が行われるわけではありません。実際の不動産売買時には売主と買主間の合意によって売買価格が決まります。
統計上ではありますが、実勢価格は、公示地価の約1.1~1.2倍といわれています。
また、公示地価はあくまでも取引の指標として示される価格であり、法的な拘束力はありません。
さらに、地価公示はその年の1月1日が基準となりますが、土地の価格は為替相場など多くの事象に左右されるため、数ヶ月で相場が変わってしまうことも少なくありません。
そのため半年後や1年後では、公示地価が参考にならない場合もあります。

実勢価格が常に公示地価の1.1~1.2倍となるとは限りません。相場を調べる際には注意しましょう。
土地の価格査定を行う方法
土地の価格を知りたい時、不動産会社に査定を受けるのも手です。
特に「標準地が近くにない」「取引事例があまりない」という土地であれば、不動産会社に依頼した方が参考になる情報を得られることもあります。
なぜなら、不動産会社も公示地価を参考にしますが、同時に土地の周辺環境や需要、同業者との取引事例の共有による多くの情報を持っており、それらを踏まえて査定してくれるからです。
不動産会社に依頼できる査定方法には、机上査定と訪問査定の2通りがあります。違いは次の通りです。
- 机上査定:データだけの査定
- 訪問査定:実際に現地の状況や聞き込みを踏まえた査定
可能であれば、詳細な状況も踏まえたうえで査定してくれる「訪問査定」の方が精度が高く、価格もより具体的なものを提示してくれます。
しかし、自宅周辺であっても、依頼できる不動産会社をほとんど知らなかったり、反対に会社が多すぎて迷ってしまったりするかもしれません。
とくに不動産会社に仲介を依頼する予定なら、不動産会社探しをきちんと行うことでスムーズな売却に繋げられます。
一括査定サイトを活用して、効率よく依頼する不動産会社を探そう
まずは、一括査定サイトを利用して依頼できる不動産会社を一括で検索し、その中から売却したい不動産のジャンルに強い会社を選んで机上査定を依頼することをおすすめします。
そこから、訪問査定を依頼する不動産会社を選ぶとスムーズでしょう。

物件の状況によっても変わるので一概にはいえませんが、目安として、大手と地域密着など、タイプの違う不動産会社2~3社にお願いすると良いでしょう。
目的に合わせて土地の価格情報を活用する
公示地価はその活用目的に合わせ、様々な視点から計算されます。一方で土地の売却額は、売主と買主の意向を反映して決定されます。
不動産の取引は流動的なため、一概にどの価格が参考になるとはいいきれません。
土地を売るのであれば、公示地価から近年の傾向を把握したり、不動産会社から査定を受けたりして、同じ土地に対する様々な視点からの評価を集め、売却額が高くなりそうな時期を予測していくことが大切です。
また公示地価を調べておくと、土地を購入する際に「この価格は地域の水準よりどのくらい高いのか」という具合に検討でき、将来の資産価値を予測する要素としても参考になります。
まずは、これから購入したい、あるいは売却したい土地の住所から、標準地や基準地の有無を調べ、公示地価や基準地価を調べることをおすすめします。