
住宅ローンが残っている家を売却する場合に、確認しておきたいことや知っておきたいポイント、状況に合わせた売却の方法や、売却後に必要な手続きをなどを紹介します。
現在の住宅ローンの残債の状況や、自己資金の違いなどによって、選択できる売却方法も変わってきます。
今の自分に合った、最適な売却の方法を見つけていきましょう。
住宅ローン返済中の家を売却することはできるのか
住宅ローン返済中の家を売却できるのかということは、家の売却を考えなければならなくなったとき、疑問であり不安なことの1つではないでしょうか。
原則、返済中の住宅ローンを全額返済しなければ、家を売却することができません。
しかし、現在住宅ローンを返済中であっても、売却をするためにできることがあります。
原則として返済中の住宅ローンを完済しないと家は売却できない
家を売却する場合は、売却対象である不動産の「抵当権」が外れていることが前提になります。
厳密には、抵当権がついている家を売却することは不可能ではありません
しかし、わざわざ抵当権がついた物件の購入を希望する人はいないでしょう。
そのため、抵当権がついたままの状態で、家を売却するのは一般的ではありません。
抵当権とは、家の債務者(持ち主)が住宅ローンを支払うことができなくなってしまった場合に、債権者(金融機関など)がその不動産を担保として差し押さえをすることができる権利のことをいいます。
金融機関などの債権者は、住宅ローンの支払いが行われなかった場合に、この権利を使い対象となる不動産を差し押さえて競売にかけ、その売却代金を支払われなかった住宅ローンの残金にあてます。
住宅ローンを使って不動産を購入し、現在もローンを返済中の場合、対象となる不動産には抵当権がついた状態になっています。
前述にもありますが、住宅ローンを完済していない不動産を売却しようとする場合には、まずその対象不動産についている抵当権を外すため、残っている住宅ローンを完済することが必要になります。
完済の方法の1つとして、家を売却し、売却した代金を使って住宅ローンを返済することがあげられます。
その場合は、売却不動産の決済、引渡しと同時に抵当権を外す「抵当権の抹消手続き」をします。
売却することで返済中の住宅ローンが完済できるのかを確認する
住宅ローンの残債が、売却で得られる金額を下回っていることを「アンダーローン」といい、で得られる金額を上回っていることを「オーバーローン」といいます。
アンダーローンの場合は、家を売却した代金で残っている住宅ローンを一括で完済することができるので、売却をする上で大きな問題はありません。
売却をした場合、アンダーローンになるのかオーバーローンになるのかを確認するために、まずは現在の住宅ローンの残債がいくら残っているのかを確認します。

最近では送られてこないこともあるので、インターネットバンキングに登録してそこから残債を見ることもできます。
住宅ローンの借入金の残高は、毎年、年末近くに金融機関から送られてくる「年末残高証明書」という書類で確認することができます。
年末残高証明書には金利を含めた金額が記載されていないので、売却日が延びる予定がある場合には、売却日に合わせて金利を含めた金額を計算しなおす必要があります。
売却金額を調べるときは、複数の不動産会社に査定の依頼することをおすすめします。
不動産会社によって査定金額にばらつきがでることがあるので規模やタイプの違う複数の不動産会社に査定依頼をしましょう。
それぞれの査定金額が極端に違い迷うこともあります。
そのような場合には「不動産一括査定サイト」を使って、場所や建物の種類などから、現在の市場の相場の価格を確認することもできます。
売却活動をしていく過程や実際の売却時には、手数料などの必要経費がかかったり、相場の変化などによって査定額を下回る金額での売却になってしまうことも考えられます。
アンダーローン・オーバーローンの判断の際には、余裕をもった金額設定をしておくと安心です。

相談する場合は、まず住宅ローンを利用している金融機関に相談しましょう。
オーバーローンの家を売却する方法
住宅ローンの残債が売却額を上回るオーバーローンの家を売却するための方法を紹介します。
預貯金などで補填して返済する
オーバーローンの家を売却する場合の方法の1つとして、家の売却代金に加えて、自己の預貯金などを住宅ローンの返済の一部にあてる方法があります。
また、両親や兄弟などの身内に援助の依頼を相談したり、所有している車や貴金属などを売却することで現金化し、返済の一部にあてる方法も考えられます。
保有している株などがある場合も、売却して資金を得ることができます。
学資保険などに加入している場合にも、保険を解約をすることで現金を用意することが可能です。
ただし、保険を解約する際には、住宅ローン完済のためだけではなく、将来的な資金計画の試算をしたうえで慎重に判断するようにしましょう。

これから先のお金の流れを確認しながら、住宅ローンの返済にあてることのできそうなものを整理していくことをおすすめします。
住み替えローンを利用する
住み替えローンとは、金融機関が、住宅ローンを利用している人のために、特別に用意をしている融資サービスのことをいいます。
この住み替えローンのメリットは、次の住宅ローンの融資額に住宅ローンの残債分を加えた額を金融機関から借りてローンを完済することで、新しい住宅を購入することが可能になるという点です。
また、あらたに自己資金の用意をする必要がないので、不足分をプラスする場合だけでなく、手元に残しておきたいと考えている場合にもおすすめです。
デメリットは、家の売却と新居購入の話が同時進行ですすんでいくため、不動産会社や金融機関とのやりとりなどに多くの時間が必要になったり、売却の時期の設定が難しいという点です。
また、住宅ローンの総額が増えるため、金融機関の審査が厳しくなるという点、そして増えた住宅ローンが売却後の生活を圧迫する可能性がある、という点もデメリットの1つとして考えられます。
新築の戸建て買換えには「つなぎ融資」の利用も検討する
土地を購入して新築住宅を建築するといった買換えの場合には、土地の購入代金と建築費用の支払いが同じ時期ではないので、一般的な住宅ローンだけではカバーしきれない可能性があります。
土地を購入して建築会社に依頼後、工事が進んでいく進捗状況に応じて、それぞれの資金を準備をし、支払いをする必要があります。
しかし、建物が完成し登記がされるまでは金融機関に融資をしてもらうことができません。
そのような場合に利用できるのが「つなぎ融資」という方法です。
つなぎ融資とは、新規での住宅ローンの融資承認を担保にすることで、一時的に金融機関が工事代金などの支払い資金の融資をしてくれるものです。
この融資は、建物が完成した際に開始される新規の住宅ローンに含まれており、建物の登記が完了した際に一括で返済をします。
つなぎ融資を利用することで、新居を建築する際にも費用は新規の住宅ローンのみでおさめることが可能となり、現在の家を売却するためにもとても便利な制度です。
支払いきれない場合には「任意売却」をする
任意売却とは、住宅ローンの支払いが滞るほど経済的に破綻してしまった場合に、家が競売にかけられてしまうことを避け、自分自身で市場売却をすることを目指す方法です。
住宅ローンの滞納が続いた状態を経ることで、任意売却をすることができるようになります。
その場合、住宅ローンを設定している金融機関に相談をして承諾を得る必要があります。
任意売却での売却代金で残債が支払いきれず、住宅ローンが残ってしまった場合には引き続き返済をしていきます。
任意売却をすることでのデメリットとして、社会的信用がおおきく落ちてしまう可能性があるということがあげられます。
金融機関のブラックリストにのってしまうので、一定の期間は新規でクレジットカードを作ることができなくなるだけでなく、今持っているクレジットカードの更新ができない可能性もあります。
さらに、新しく担保融資の申し込みができなくなってしまうこともあります。
債権者(金融機関)の了承が必要なことや、手続き内容も一般的な売却とは異なるので、任意売却をする場合は専門の業者に依頼をします。

ホームページなどで専門の不動産会社を見つけ、相談してみましょう。
住宅ローン返済中の家を売却するときの流れ
住宅ローン返済中の家を売却するときは、次のような流れに沿って売却活動を行います。
1.住宅ローンの残債を調べる
住宅ローンの残債は、毎年年末に金融機関から送られてくる「年末残高証明書」という書類で確認をすることができます。
年末残高証明書の記載内容には金利が含まれていないので、売却の時期がわかっている場合にはその時期に合わせて金利を計算をしなおしておきましょう。
契約者本人から直接金融機関に問合せをすることでも、正確な残債の確認をすることができます。
2.家の売却金額を調べる
家の売却金額を調べるために、不動産会社に売却金額の査定を依頼します。
売却の実績や担当者の経験・店舗の立地などにより、不動産会社によって査定金額に違いが出る場合があります。
そのため、売却金額の査定は、複数の不動産会社に依頼することをおすすめします。
会社の規模やタイプの異なる複数の不動産会社に査定を依頼することで、現在の相場や違いを確認することができます。
また、「不動産一括査定サイト」を使って、おおよその売却金額の目安を知ることもできるのでおすすめです。
あらかじめ自分自身でも相場を調べておくことで、その後の不動産会社とのやりとりの際にも役に立つでしょう。
3.家の買い替え計画を立てる
メリット | デメリット | |
---|---|---|
売り先行型 |
|
仮住まいが必要になる可能性がある |
買い先行型 | 売却に焦り売却金額が安くなる可能性がある | 二重ローンの可能性がある |
家の買い替えには、住んでいる家の売却を先に行う「売り先行型」と、新しく住む家の購入を先に行う「買い先行型」があります。
「売り先行型」の場合、売却の際に購入希望者との交渉に妥協をすることなく、時間に余裕をもってすすめることができます。また、売却金額が明確なので、新居を購入をする際の資金計画もスムーズです。
しかし、売却後すぐに新居が見つからない場合、仮住まいが必要になる可能性があります。
そのため、新居を選ぶときに焦ってしてしまうというデメリットが考えられます。
「買い先行型」の場合は仮住まいの心配がなく、新居をゆっくりと探すことができます。
しかし、購入が決まってから売却までに時間がかかってしまうと、二重ローンになってしまう可能性があります。
そのため、売却の際に焦ってしまい、予定していた売却希望金額よりも低い金額で妥協をし、売却を決めてしまう可能性があるので慎重に検討するとよいでしょう。
4.不動産会社を選定し売却依頼先を決定する
売却金額の査定を依頼した複数の不動産会社の中から、売却を依頼する不動産会社を決定し、媒介契約を結びます。
査定金額の高さだけではなく、担当者と実際に話してみたときの印象やレスポンスのはやさなども考慮し、信頼して任せることのできる不動産会社を選びましょう。
媒介契約の種類は3種類あり、それぞれにメリット・デメリットがあるので、自分の希望に合った媒介契約を選ぶことをおすすめします。
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
---|---|---|---|
他の業者への依頼 | 可 | 不可 | 不可 |
自己発見取引 | 可 | 可 | 不可 |
有効期間 | 制限なし | 3ヶ月以内 | 3ヶ月以内 |
業務処理近況報告 | 制限なし | 2週間に1度以上 | 1週間に1度以上 |
5.購入希望者と交渉をする
売却に時間がかかってしまっている場合には、不動産会社に相談をしたり、おなじような条件で売りに出されているほかの物件の条件などを確認します。
そして、必要があれば売り出し価格の見直しをします。価格の見直し後もしばらく売却できない状況が続く場合には、不動産会社の「買い取り」も検討してみましょう。
売却金額は安くなってしまいますが、早めに売却をすることで売却後の資金の流れも把握しやすくなります。
媒介契約時に「買取保証制度」を設けていて、一定期間売却ができない場合には買い取りをしてくれる不動産会社もあります。契約時に確認してみましょう。
購入希望者が現れたら、条件の交渉をします。交渉された場合にゆずれる部分とゆずれない部分をあらかじめ明確にしておくと、交渉の際にスムーズに話が進みます。
事前に不動産会社の担当者に相談しておくのもよいでしょう。
6.交渉が成立したら売買契約を交わす
引き渡しの日にちや売買代金の受取方法などの詳細が具体的に決定したら、売買契約をかわします。
契約時に必要な書類の準備の際に、聞きなれないものが多く不安になるかもしれません。
時間に余裕をもって事前に不動産会社に確認をし、準備をしておくことをおすすめします。
また、新居への引っ越しを考慮して、余裕をもって引き渡しの日にちを決定するとよいでしょう。
7.売却代金を受け取り家を引き渡す
売買契約が成立したら、引っ越しの手配など物件の引き渡しのための準備をします。
売却代金の決済は金融機関で行うのが一般的です。
決済と引き渡しのときに、司法書士によって抵当権の抹消や所有権移転登記の手続きが行われます。
事前に必要な書類の準備をし、物件の引き渡しに備えましょう。
固定資産税などの税金は、引き渡し日までの日割り分の精算を済ませておき、領収書は引き渡し日の当日に持参します。
書類の不備などがあると、引き渡しができない可能性があります。事前に不動産会社と入念に打ち合わせをし、疑問点は早めに解消しておきましょう。

道中で目的を見失わないようにゴール(売却の目的)と道(全体的な流れ)をしっかり確認しておきましょう。
住宅ローン返済中の家を売却する際にかかる費用
住宅ローン返済中の家を売却する際にかかる費用は以下の通りです。
売却金額や状況などにより金額が変動します。
費用の中でも高額になる「仲介手数料」
不動産会社が受け取ることのできる仲介手数料は「宅地建物取引業法」によって上限が定められています。
定められた上限を超える仲介手数料を受け取った場合には法令違反となり、罰則の対象になります。
取引額 | 報酬額 |
---|---|
200万円以下の部分 | 取引額の5%以内 |
200万円超400万円以下の部分 | 取引額の4%以内 |
400万円超えの部分 | 取引額の3%以内 |
あくまで「上限金額」なので、不動産会社によって請求される仲介手数料の金額が上下します。
また、400万円を超える売却の場合には、下記の式を使うことで仲介手数料の上限額を速算することができます。
売却金額×3%+6万円+消費税
仲介手数料の支払いは、契約締結後と引き渡し時の2回に分けて行うのが一般的です。
金額や支払時期については、契約締結前に確認をしておきましょう。
売買契約書の印紙税
売買契約書を作成する際には、印紙税を納付するため、それぞれの金額に合わせた収入印紙を貼付します。
売買契約書に記載する金額が10万円を超える場合、軽減措置の対象となります。
軽減税率適用後の印紙税は契約金額によって次の表のように変動します。
契約金額 | 軽減税率適用後の印紙税 |
---|---|
10万円超50万円以下 | 200円 |
50万円超100万円以下 | 500円 |
100万円超500万円以下 | 1千円 |
500万円超1千万円以下 | 5千円 |
1千万円超5千万円以下 | 1万円 |
5千万円超1億円以下 | 3万円 |
1億円超5億円以下 | 6万円 |
抵当権抹消手続きとその費用
ローンが完済されると金融機関から登記に関係する書類が郵送されるので、届いたら法務局で抵当権抹消登記をします。
登記申請書がない場合は、事前に法務局のホームページからダウンロードし、必要事項を記入します。
金融機関からは「登記識別情報(または登記済書)」「登記原因証明情報」「抵当権者の委任状」の3点が郵送されます。「登記申請書」とあわせて4点を法務局に持参します。
抵当権抹消に必要な登録免許税は、1件につき1,000円です。
家と土地では2件になるので2,000円となります。
登記を依頼する際にかかる「司法書士報酬」
法務局に自ら出向き手続きを行うのが面倒な場合や不安な場合は、登記の手続きを司法書士に依頼することができます。
依頼料は各事務所により異なりますが、5,000円~10,000円程度が一般的な金額です。
ただし、登記の状況などによって事務手続きが複雑になってしまう場合があります。
その場合には別途、追加費用がかかることがあるので、依頼の前に費用の確認するとよいでしょう。
住宅ローンの一括返済時にかかる「早期返済手数料」
住宅ローンを一括で返済する場合に、金融機関によっては手数料がかかる場合があります。
手数料の金額は金融機関によって異なるので、家の売却を考えはじめた段階で確認しておきましょう。
家の売却で利益が出た場合にかかる「譲渡所得税」
家などの不動産を売却した際に利益が出た場合には、譲渡所得と見なされます。
そして、その譲渡所得には譲渡所得税が課税されます。
譲渡所得税の税率は不動産を所有していた期間によって変動します。
課税譲渡所得金額の計算方法は以下のとおりです。
- 譲渡価格−(取得費+譲渡費用)-特別譲渡額(一定の場合)=課税譲渡所得金額
また、「取得費」「譲渡金額」「特別控除額」の詳細は次のように定められています。
取得費 | 土地や建物の購入代金や仲介手数料などの合計額 |
---|---|
譲渡費用 | 仲介手数料や測量費など売却のために直接使用した費用の合計額 |
特別控除額 | 住んでいる建物と土地を売却したとき:最高3,000万円 |
税額は、課税譲渡取得金額に税率をかけることで算出します。
税率は、売却をした年の1月1日現在の所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」、所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」となります。
所得税 | 住民税 | |
長期譲渡所得 | 15% | 5% |
短期譲渡所得 | 30% | 9% |
税額は、課税譲渡取得金額に税率をかけることで算出します。
税率は、売却をした年の1月1日現在の所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」、所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」となります。
また、平成25年分の所得税より東日本大震災復興支援のための措置として「復興特別所得税」が増設され、譲渡所得税の所有税にも適用されます。
平成25年から平成49年までの基準所得税率が復興特別所得税の対象となります。
給与所得者は源泉徴収での対応となります。
復興特別所得税額の計算方法は「復興特別所得税額=基準所得税額×2.1%」となります。
対象の可能性がある場合は国税局のホームページまたは税務署での確認をおすすめします。

売却金額が全て残るわけではありません。
これらの諸費用が差し引かれた分が手元に残ることとなりますので、あとで「これだけしか残らないのか」と驚かないよう、しっかり確認しておいてください。
住宅ローン返済中の家を売却するときの注意点
住宅ローン返済中の家を売却するときの注意点は、「住宅ローンの残債だけでなく諸費用の計算も忘れずに行う」そして「住み替えローンの融資審査は通りにくい」ということです。
諸費用の計算をしていなかったことで、実際に売却活動をはじめてから資金不足で焦ってしまったり、予定していた融資が受けられずに困ったりすることのないよう、注意点を確認しておきましょう。
住宅ローンの残債だけでなく諸費用の計算も忘れず行う
住宅ローンが残っている家を売却する場合、住宅ローンの残債を支払うだけではなく、手続きをすすめる過程でさまざまな経費の支払いが必要になります。
試算の段階で住宅ローンの残債だけを考えて計算をしてしまうと、売却活動中に資金が足りなくなってしまったり、売却後に手元に残ると考えていた現金が予定よりも少なくなったりする可能性があります。
必要なお金が不足してしまうということをさけるためにも、あらかじめ売却に必要な経費を把握しておき、余裕を持った試算をするとよいでしょう。

売却の際にかかる費用は、売却代金の3.5%程度かかるのが一般的といわれています。売却時のお金を試算する際の目安としましょう。
住み替えローンの融資審査は通りにくい
住み替えローンを利用することで、現在の住宅ローンを完済していない状態のまま、不足分を補填して新しい住宅を購入することができる可能性があります。
しかし、実際に利用する際には、あらためて金融機関の審査を受けることになります。
現在の住宅ローン返済額よりも総額が増えるため、審査の際に社会的な信用が重視されます。
収入や職種、勤務先の規模や勤続年数など、より詳細な情報をもとに厳しい審査が行われるため、一般的な住宅ローンに比べると審査が通りにくいといわれています。

住宅ローンの金融機関や、住み替えに強い専門の不動産会社、身近な不動産関係に繋がりのある方などに相談しましょう。
売却時に譲渡益が出た場合に利用できる税金控除
「居住用財産の定義」の条件を満たしていて、売却時に譲渡益が出た場合には、譲渡所得税の控除を受けられる可能性があります。
「居住用財産の定義」は以下のとおりです。
- 現在、住居として使用している自宅であること。
- 引っ越しをした日から3年後の年末までに売却を完了していること。
- 家を解体した場合には、解体から1年以内に土地売却の契約を完了していること。
- 本人が単身赴任の場合は配偶者などが住んでいる家の売却であること。
売却時に譲渡益が出た場合に利用できる税金控除は3種類です。それぞれ順番に紹介します。
マイホーム売却時の3,000万円の特別控除
譲渡所得税の特別控除の中でも代表的な制度です。所有期間や居住期間の定めはなく、居住用財産の定義を満たしていれば、譲渡所得から3,000万円の控除を受けることができます。
条件が合えば「10年超所有軽減税率の特例」との併用が可能ですが、「特定居住用財産の買い替え特例」との併用はできません。
10年超所有軽減税率の特例
居住用財産の定義を満たしたうえで、不動産を売却した年の1月1日時点で土地と建物のどちらの所有期間も10年を超えている場合に受けることができる控除です。
適用を受けると売却時の譲渡所得にかかる所得税と住民税の税率が低くなります。居住期間による制限は特にありません。
「マイホーム売却時の3,000万円の特別控除」との併用は可能ですが、「特定居住用財産の買い替え特例」との併用はできません。
特定居住用財産の買い替え特例
居住用財産の定義を満たしたうえで、新居を購入したときに受けることができる控除です。所有期間が売却した年の1月1日時点で10年を超えていること、居住期間が通算して10年以上であることが条件です。

マイホームを売った年の前年から翌年までの3年の間にマイホームの買換えをした場合は、譲渡価格が1億円以下、売った時の1月1日現在で所有10年超、居住期間10年以上の場合など、その譲渡益の課税を繰り延べる特例が受けられます。
売却金額より新居の購入金額が大きい場合に適用される制度です。
免除ではなく「課税の繰り延べ」とよばれ、税金の加算はされません。
新居の条件として、建物が50平米以上であること、土地が500平米以下であること、が定められています。「マイホーム売却時の3,000万円の特別控除」「10年超所有軽減税率の特例」との併用はできません。

専門的なことも多くなってきますので、身近な税理士に相談するといいでしょう。
売却時に譲渡損が出た場合に利用できる税金控除
売却時に譲渡損が出た場合に利用できる税金控除は以下の通りです。それぞれ順番に紹介します。
マイホームを買い替えたときの特例
マイホームを買い替えたときには、居住用財産の定義を満たしたうえで「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」を受けることができます。
適用を受けることで、売却時に譲渡損失が出た場合、一定額の所得税が還付される制度です。
譲渡する年の1月1日現在で所有期間が5年を超えていることが条件ですが、居住期間の定めや譲渡資産にかかる住宅ローンの要件はありません。
マイホームを譲渡した時の特例
マイホームを譲渡した場合、居住用財産の定義を満たしたうえで「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」を受けることができます。
適用を受けることで、売却時に譲渡損失が出た場合、売却に対する課税を先送りにできる制度です。
譲渡する年の1月1日現在で所有期間が5年を超えていれば、居住期間の定めはありません。また、買い替え資産の要件もありません。

翌年以降に利益が出た場合、それに賦課される税金が軽減されますので、是非使っておきましょう。
住宅ローン返済中の家を売却する場合の相談先
売却全般 | 不動産会社 |
財産分与や遺産分割 | 弁護士・税理士 |
税金 | 税理士 |
登記手続き | 法務局・司法書士 |
確定申告 | 市区町村主催の無料相談会・税理士 |
家を売却するときには多くの手続きがあり、相談先もそれぞれ異なります。困ったことがあったら、専門家に相談をしましょう。
不動産のことは不動産会社に聞く
不動産の売却全般についての相談は、やはり不動産の知識と経験が豊富な不動産会社に相談するのがよいでしょう。
家を売却したいと思ったら、自分に合った不動産会社を見つけることからはじめます。
まずは、複数の不動産会社に売却の査定を依頼します。
不動産会社を選ぶ際には、依頼内容や実際の数字だけでなく、営業担当者の対応の仕方や印象なども合わせて比較しましょう。
任意売却をする場合は専門業者に相談する
任意売却は、住宅ローンの支払いが滞ってしまうほど、経済的に破綻してしまった場合に使われる方法の1つです。
住宅ローンの支払いが滞り続けると、最終的には債権者(金融機関か融資設定時に契約した保証会社)によって担保である家が競売にかけられてしまうことになります。
家が競売にかけられてしまう前に金融機関などの債権者に了承を得ることで、自分の意志で市場売却が可能になります。
競売にくらべて、手元に資金が残せる、売却時の自己負担金を準備する必要がなく競売よりも高値で売却できる可能性がある、などのメリットがあります。
通常の売却とは手続きが異なるため、任意売却をする場合には専門の業者に相談・依頼をしましょう。

住宅ローン返済が関わる売却は特に難しいことがいいので、わからないことは、専門家に相談しましょう。
住宅ローン返済中の家の売却は計画的に行おう
住宅ローンの返済中の家を売却する場合には、まず住宅ローンを完済することが第一歩です。
現在のローン残債や貯蓄などの資金の状況により、売却の方法もさまざまです。
実際に売却をする場合には、住宅ローンの残債だけでなく、手続きをすすめる過程での諸費用が必要になったり、家の売却と新居の購入をすすめるタイミングのメリット・デメリットがあったりします。
現在の資金の状況を確認しながら自分にとって最適な売却方法を見つけ、住宅ローン返済中の家の売却を計画的に行っていきましょう。

専門家に相談することにより、解決方法が見つかるかもしれません。いろんな方に相談して、売却を成功させましょう。